関東も危ない豪雨降らせる「線状降水帯」の正体 集中豪雨を引き起こす大きな原因の1つ

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線状降水帯が特に危険視されるのは、線状降水帯が移動せずにその場で停滞する場合です。先ほど挙げた線状降水帯の3つのタイプの中でも、集中豪雨をもたらすのはほとんどが「バックビルディング型」と「バックアンドサイドビルディング型」なのですが、それはこのふたつのタイプが積乱雲が同じ場所にできやすいものだからです。

西日本だけに発生するわけではない

なお、線状降水帯はなにも梅雨末期だけしか登場しないわけではありませんし、西日本にしか発生しないわけでもありません。たとえば2015年の9月に鬼怒川が氾濫した関東・東北豪雨も、線状降水帯が次々と発生したことがわかっています。

このときは、台風から変化した温帯低気圧と、それとは別の台風によって発生しました。つまり、梅雨が明けたら安心だとか、東日本に住んでいるから安心というわけではないのです。

もっと詳しく線状降水帯のことを知りたいのであれば、JAMSTEC(国立研究開発法人海洋研究開発機構)のホームページに掲載された茂木耕作副主任研究員による「線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす」というコラムがオススメ。このコラムでは球磨川の氾濫を引き起こした今年の7月3日や4日の集中豪雨の原因や、なぜ線状降水帯が動かなかったかについて考察されています。

茂木研究員は、今年に限らず、以前から線状降水帯が発生しやすい季節にコラムを執筆し、ホームページで発信してきました。それはなぜなのか尋ねたところ、「線状降水帯という言葉をもっと広めたい」という気持ちが発信の原動力になっているとの答えがありました。

「線状降水帯という言葉がメディアに登場したのは、私の記憶でいうと8年ほど前からだったのですが、しばらくはなかなか広まりませんでした。毎年この言葉を発信し続けてきたこともあり、この2~3年ほどでようやく線状降水帯という言葉が一般の人々の会話にも出てくるようになってきたと実感しています」(茂木研究員)

なぜ、線状降水帯という言葉を広めたいのか。それは、1人1人の防災意識を高めてほしいという気持ちがあるからと言います。

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