日本人がよく使う英語の挨拶が実は不自然な訳 簡単な言葉でも正しく訳せるとは限らない

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しかし、その質問の英語にはじつは問題があります。「YOUは何しに日本へ?」という珍妙な日本語は面白おかしくするためでしょうからそれはしかたないとして、それが英語では“Why did you come to Japan?” となっているのです。

これは文法的には正しいし、おそらく「あなたはなぜ日本に来たのか?」という日本語を英訳せよ、という試験問題に対する解答としては満点でしょう。しかし、それで正しいと思って疑わないことが実は非常にまずい。

このことは日本に住む英語ネイティヴ・スピーカーたちの間では、「日本人の英語の不自然さ」の一例としてすでに広く話題になっているようなのですが、要するに、こんな言い方で質問をいきなりされたらあまりいい気持ちがしないという点が問題なのです。

もちろん、空港に降り立った時、いきなり訳のわからないTV番組の人間と称する日本人につかまって、「何をしに来たのか?」と聞かれたら、むっとして“None of your business!”(余計なお世話だ)と返したくなる人も少なくないでしょう。

文法は正しいが丁寧な聞き方ではない

でも番組で取材を受けている人たちはみなにこにこ答えてくれている。こういう変な出迎えも日本の面白いところの1つと楽しんでいるのかもしれない。こういうやりとりを見ていると、私は「日本て、なんていい国でしょう!」と自画自賛するよりも、むしろ「日本に来てくれている外国の皆さんは、なんていい人たちなんだろう!」と感謝すべきではないかと思ってしまいます。

しかし、ここで指摘しておきたいのは、“Why did you come to Japan?” という言葉づかいそのものの問題なのです。確かにこの英文は間違っていません。しかし、英語としては、問いただしているような感じがして、歓迎しているようには聞こえません。

では、こういうことをもしたずねるとしたら、英語ではどう言ったらいいのでしょうか? 英語のネイティヴ・スピーカーたちが共通して指摘しているように、英語で一番自然な言いかたはおそらく、“What brings you to Japan?”(あるいは過去形にして“What brought you to Japan?”)でしょう。

“bring” という動詞は「連れてくる、持ってくる」という意味ですから、直訳すれば「何があなたを日本に連れてくる(きた)のか」ということです。簡単な構文ではありますが、「何が」といったモノや抽象語を動詞の主語にする発想法は、日本人にはなじみにくく、使いこなすのは難しいようです。

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