第2波来たのに緊急事態宣言に及び腰な3つの訳 今のうちに経済を回さないと冬に耐えられない

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実はこの傾向は世界最大の新型コロナ感染国となったアメリカでも似た形で見られます。アメリカでは6月に入り、新型コロナが全州で拡散して感染者が増加の一途をたどっているのですが、その一方でWHOのグラフを見る限り、死者数のピークは4月から5月の頭にかけての時期であって、6月以降は日本と違って一定数の死者は出ているもののその数は落ち着いています。

そもそも日本では4月に緊急事態宣言が出された頃までは新型コロナの抑え込みに失敗すると国内に最悪で42万人規模の死者が出るという予測が念頭にあって大規模な自粛が行われました。その後コロナについての理解が深まり、医学的なリスクについての認識も修正されてきています。一方で日本経済は中小事業者を中心に経済的に壊滅的な被害が出始めています。

政府は経済優先で動かざるをえない?

当時は「人命と経済を天秤にかけることはできない」といった正論がまかりとおりましたが、その人命リスクの規模感が下方修正されたことで、政府としては経済優先で動かざるをえない状況が起きているようです。

前回の大不況であるリーマンショックの時には所得弾力性が大きい自動車業界や旅行業界が大きな打撃を受けました。このうち大企業が中心の自動車業界は銀行がクレジットラインを維持すれば乗り越えられる。その一方で中小や零細企業が多い旅行産業では需要喚起がなければ倒産が相次ぐことは間違いありません。

政治家や官僚がこういった理由を安易に口にすることはないでしょうけれども、実際のところは政府がGo Toトラベルキャンペーンに踏み切る背景には、このような経済学の裏付けが存在するのです。とはいえそれにしても国民感情を考えるとバラマキであり、丸投げ中抜きが問題になっているGo Toトラベルキャンペーンをなぜ感染者が急増している時期に前倒しで急ぐのか不思議に思えるかもしれません。そこに第3の理由が存在します。

理由3 冬になれば緊急事態宣言を出さざるをえない

ここで先ほどご覧いただいたWHO発表の新型コロナの死者数グラフについて別の切り口で比較してみたいと思います。図4は死者数を日本、アメリカ、ブラジル、南アフリカで比較したものです。ブラジルは今やアメリカに次ぐ世界2位の感染国で、南アフリカはWHOが新型コロナの拡大を懸念するアフリカ大陸の代表として挙げました。

グラフの形を見ていただいて直感的にわかることは、南半球の2カ国では主に6月に入ってから死者数が増え始め、7月もその勢いは衰えていないことです。

次ページ南半球の6月、7月は北半球の12月、1月にあたる
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