第2波来たのに緊急事態宣言に及び腰な3つの訳 今のうちに経済を回さないと冬に耐えられない

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4月の頃は報道番組などで「検査を拡大すべきだ」という声が高まっていると同時に、専門家の推論として「全数検査ができたらおそらく感染者は公表数字よりも2~3倍多いのではないか」といった意見も表明されていました。その前提で考えると見た目のグラフの高さが同じなだけで、実際のグラフの山は4月と比べて現在はまだ低いととらえることもできるわけです。

しかし新型コロナの感染者数は、緊急事態宣言が解除された5月25日以降、確実に増えてきているのは事実です。政府や都は「感染者がいちばん多いのは夜の街関連である」と繰り返し主張していますが、事実はそうでもありません。直近の東京都の感染者でいちばん多いのは経路不明の46%です。これは追跡できない感染経路が都内で急増していることを示しています。

アジアで日本と同じような再流行を見せている国を探してみると、中国、韓国、台湾は比較的コロナの抑え込みがうまくいっていて再流行の兆しは見られません。グラフを見ていただきたいのですがいちばん日本とよく似ているのが香港です(図2)。そして香港ではディズニーランドを再び休園させるなどコロナ封じ込めに動き始めました。

一方の日本では緊急事態宣言が解除されたことで通勤ラッシュがふたたび始まり、段階的な解除で飲食店や繁華街に人が戻り、スポーツイベントにも観客が入れるようになりました。季節は夏なので屋外でマスクを外す人も増えてきました。

集団免疫などほとんどできていない

6月に相次いで大規模な抗体検査が行われましたが、新型コロナの抗体を持っている人の割合は厚生労働省が発表した東京都の検査で0.10%、ソフトバンクグループ4万人の医療従事者データで0.43%と集団免疫などほとんどできてはいないことが判明しました。そもそも抗体を持っている人が少ない新しい伝染病なので感染しやすいという前提条件は変わっていません。

その前提下で7月22日に前倒しで国民の旅行需要を増やす目的の「Go Toトラベルキャンペーン」が開始されるので、この夏の新型コロナ感染者数が減りにくい状況が作られています。国民から見れば4月の緊急事態宣言と、7月のGo Toキャンペーンは国の政策としては明らかに矛盾しているように見えるのですが、なぜそんな判断につながるのでしょうか。そこで2つめの理由を見てみたいと思います。

理由2 死者が少ない

先ほど7月の感染者の内訳について重症者が少ないとお伝えしましたが、さらに少ないのが死者数です。グラフ(図3)を見ていただくとわかるように日本の新型コロナの感染者数は4月、5月に集中していて、緊急事態宣言が解除された5月25日以降は激減しています。

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