世紀の合併が終焉、タイム・ワーナーから分離したAOLの静かな再出発
かつての輝きを取り戻せるか。米インターネット会社AOLは米メディア大手タイム・ワーナーから分離・独立し、昨年12月10日にニューヨーク証券取引所で再上場した。取引開始のベルを鳴らしたティム・アームストロング会長兼CEOらは満面の笑みを見せていた。
だが、「世紀の合併」から10年。ネット接続サービスの加入者減少で売上高は半分以下となり、合併発表時に1600億ドルだった時価総額も、再上場後は30億ドル弱と激減。全盛期の面影は見られない。
水と油の企業文化 相乗効果は実現せず
電話回線を利用したネット接続会社(ISP)として急成長したAOLが、ニュース専門局CNNなど有力コンテンツを取りそろえるタイム・ワーナーを買収する形で合併を発表したのは2000年1月。当時、売上高300億ドルを誇る巨大メディアの主導権を新興企業が握る「小が大をのむ」合併として、米国でも大きな脚光を浴びた。タイム・ワーナーが持つケーブルテレビ網を使ったブロードバンド接続への事業転換やコンテンツのネット配信など、いくつもの相乗効果が期待されていた。
ところが、実際は出足からつまずきっぱなしだった。折あしく、合併を完了する1年の間にネットバブルが崩壊した。さらに新会社のAOLタイム・ワーナーはAOLの資産価値暴落もあり、02年12月期に986億ドルという空前の純損失を計上。長い歴史を持つ大企業のタイム・ワーナーと自由闊達な典型的ネット会社とでは、企業文化がまるで異なる。巨額損失も影響し、統合に懐疑的だったタイム・ワーナー社内から不満が噴出し、関係者によると社内では分裂が進んだという。
また、米連邦取引委員会(FTC)が統合条件として、タイム・ワーーナーのCATV網をほかのISPへ優先的に開放するなどの制約を設けたことも響いた。結果、AOLが見込んだ高速ネット接続への事業転換は思うように進まず、加入者数は02年の約3000万をピークに減少。コンテンツ拡充によるネット配信も、タイム・ワーナー側の出し渋りもあり、中途半端なままだった。