世紀の合併が終焉、タイム・ワーナーから分離したAOLの静かな再出発


元グーグル幹部が主導 事業モデルの急転換

この10年でメディアを取り巻く環境も激変した。かつて自らネットインフラを持とうとしていたが、携帯電話など配信先が多様化したことで、「すべてを自社で取りそろえるのではなく、(コンテンツの)配信は業務提携先に任せればいいという考えに変わった」(情報通信総合研究所・グローバル研究グループの志村一隆主任研究員)。こうした流れもあり、タイム・ワーナー内でもAOL分離案が浮上。昨年4月、グーグルの広告販売担当副社長だったアームストロング氏をAOLのトップに迎え入れると、翌5月には同社のスピンオフが発表された。

再上場に伴って、ブランドロゴは「Aol・」へ改変。コンテンツ強化を通じて広告収入主体の事業転換を目指している。もともと自社のポータルサイトでは多様なコンテンツを展開し、根強いAOLファンは少なくない。アームストロング氏もそこに注目し、さらなる強化に着手。執筆陣としてニューヨーク・タイムズ紙出身などの有力ジャーナリストの採用を続ける傍ら、フリーランスのライターや写真家などが自由に投稿できるシード・コムを立ち上げた。

昨年6月には市町村単位の地域ごとのニュースなどを掲載するパッチ・コムやゴーイングを立て続けに買収し、ニッチ分野の開拓にも目を配る。また、ネット上で広告主とサイト運営者を効率的に引き合わせるサービスを手掛けるアドバタイジング・コムを傘下に収め、広告事業のテコ入れも実施。一方、再上場後に全体の3分の1に相当する人員削減に踏み切る計画を打ち出し、コスト削減にも余念がない。

動きの速いネット業界で後れを取り戻すのは容易ではない。ただ、米国で新聞や雑誌の廃刊や減ページ、記者のリストラが相次ぐ中、「行き場を失った有能な人材を集められれば、質の高いコンテンツをネットで提供できるサイトとして生まれ変われる余地はある」と、ネット業界に詳しいサロン・コム共同設立者のスコット・ローゼン氏は話す。一見すると静かな再出発を切った新生AOLは今、怒濤の勢いで転換を急いでいる。

(週刊東洋経済)

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