菅義偉「コロナ第2波、かなり準備はできている」 官房長官が語る地方、縦割り行政、経済、五輪
私がふるさと納税制度を作った理由
塩田潮(以下、塩田):安倍晋三内閣の官房長官という立場を離れて、政治リーダーとして、これからの日本が目指すべき政治や社会の将来像、実現のためのシナリオについて、どう構想していますか。
菅義偉(以下、菅):私自身はゼロから政治家になりました。秋田県で生まれ、高校まで秋田県で育って、田舎をよく知っています。2006年に総務大臣になり、2007年にふるさと納税制度を作りました。東京に税収が集中しすぎているから、法人税収を吸い上げて地方に回すようにした。当時、子供の医療費が無料になる自治体のサービスは、小学校に上がるまでが全国の平均的な実態でしたが、東京では中学校卒業まで無料でした。こんなに格差があっていいのかと思った。それがふるさと納税制度を作った1つの要因でした。ある意味で、私の政治の原点です。日本は地方も都会もきちんと連携して発展していかなければならない。
それと、経済をよくするには、消費の構造を変える必要があります。大きな消費は都会で行われるとよく言いますが、地方でも一定の収入を得られるようになれば、多くの人が地方で働くようになり、地方での消費が増えます。そのための切り札の1つが私のライフワークである農業改革です。安倍政権で60年ぶりに農協改革の法律改正を行いました。それまで全中(全国農業協同組合中央会)が全国約600の農協の監査権と指揮権を持っていましたが、それを外して、各地域の農協がその地域で作りたい作物を作ることができるようにしました。
さらに、森林改革と漁業の改革も行い、70年ぶりに法律を改正して、やる気のある民間企業が参入できる仕組みを作りました。
日本の農産品は世界で非常に評価が高く、ものすごく魅力があると思っています。政府として「地方創生」を掲げています。農林水産業の成長産業化とインバウンドを2本柱として、私が主導してやってきました。今はコロナで観光は非常に厳しい状況ですが、再び海外に目を向けることによって、農林水産業とインバウンドをしっかり立て直し、地方で働いて、例えば年間600万円くらいの収入が得られる姿を目指していきたい。
ふるさと納税は前例のない仕組みだったので、総務省の官僚の抵抗に遭いました。私が総務大臣のときに制度は作ったが、官僚は優秀だから、あまり活用できないように作ってしまう。当初、利用額は毎年100億円前後でした。私が官房長官になって、総務省がPRに気を遣っただけで400億円に伸び、さらに当初の意図どおり限度額を2倍にして、利用者がワンストップで利用できるように制度を見直したところ、1600億円、2800億円、3600億円と伸びて、直近は5000億円を超えています。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら