政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点 「地方の良質な雇用」を増やす賢い投資になる

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12月7日、政府が発表した「世界レベルのホテルを全国に50カ所程度新設する」という方針は、理に適った政策だといいます(撮影:尾形文繁)
オックスフォード大学で日本学を専攻、ゴールドマン・サックスで日本経済の「伝説のアナリスト」として名をはせたデービッド・アトキンソン氏。
退職後も日本経済の研究を続け、日本を救う数々の提言を行ってきた彼は、著書『日本人の勝算』の中で、生産性向上の必要性を繰り返し説いている。
日本において大幅な生産性の向上が期待できる産業の1つが「観光」である。観光業における「高級ホテル」の意味と「政府による支援」の必要性について、解説してもらった。

国による「高級ホテル建設」に賛否両論

先日、菅義偉官房長官が、海外の富裕層が宿泊するような高級ホテルを国の支援で50カ所開発していくと表明したところ、賛否両論が巻き起こりました。

『日本人の勝算』は8万部のベストセラーとなっている(書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします)

とくに争点となっているのは、この開発に財政投融資を活用し、日本政策投資銀行による資金援助などをするという点です。

人口減少に対応するために欠かすことのできない「観光」に多くの方たちの関心が集まるのは、大変喜ばしいことです。一方で、「高級ホテル開発」を政府が後押しすることの「真意」が正確に伝わっていないことが残念です。

これは、かつてのリゾート法下で行われた国主導の施設開発などとはまったく異なるもので、日本の観光をさらに成長させていくためには必要不可欠な戦略なのです。

そこで、正確な認識に基づいた議論をしていただくため、富裕層向けの高級ホテル50カ所開発という戦略が日本経済にどのような意味があるのかを解説したいと思います。

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