政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点 「地方の良質な雇用」を増やす賢い投資になる

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5つ星ホテルが多い国では当然、その下のランク、4つ星ホテルや3つ星ホテルはもっと多くなります。つまり、このような国は、1泊100万円出せる超VIP、1泊50万円なら払えるVIP、1泊10万が目安のビジネスエリートなど、幅広いグレードの客を呼ぶことが可能です。当然、一般ビジネスマン向けの価格帯のホテルしかない国よりも多くの観光収入を得ていると考えられます。

では、ひるがえって日本はどうかというと、近年5つ星ホテルが増えてきたとはいえ、わずか32軒しかありません。タイは110軒、フランスは125軒、アメリカはなんと755軒です。インドネシアはバリ島という1つの島だけで42軒もあります。国際的に見ると、日本のレベルはお話になりません。

たしかに、安くて質のいいビジネスホテルに素泊まりし、観光で満足するような外国人観光客もいます。しかし世界には、5つ星ホテルで優雅に過ごしながら、異文化体験をしたいという富裕層もたくさん存在しています。

日本は残念ながら、このあたりの「上客」を取りこぼしてしまっているのです。サラリーマンの出張のためにつくられたホテルばかりで、「多様性」がないからです。

このように指摘すると、「富裕層なら一流旅館に泊まれ」と言う人がいますが、旅館の多くは数日程度の宿泊を想定しており、その他多くの理由で外国人にとっては使い勝手が悪いのです(参考:外国人が心底ガッカリする「日本の旅館事情」)。

この点について、観光政策の専門家でアメリカ・セントラルフロリダ大学ローゼン・ホスピタリテイ経営学部の准教授を務める原忠之氏に聞いたところ、次のように話してくれました。

「多くの日本の地方都市で、いちばんいいホテルが客室面積15~20㎡で1万円程度のホテルチェーン、その下は5000~8000円程度で11~15㎡のホテルという、日本のサラリーマン向けに過剰開発されたホテルしかない状況は、世界標準とは明らかに乖離しています。1泊3万~5万円程度簡単に払う能力と意図もあるゲストに対して、上位側ホテル商品群のポートフォリオ分散ができていません」

観光収入8兆円の目標を実現するために、日本に必要なのは「多様性」です。そのためには、全国の5つ星ホテルを、最低でも100軒程度にまで増やさなければなりません。つまり、今回、政府が後押しをする「高級ホテル50カ所」というのは、日本経済のための富裕層獲得戦略を実行に移すということなのです。

需要が先か、供給が先か

ここまでの話である程度は納得できたという人も、「国が融資をする」というところに引っかかっているかもしれません。

日本に5つ星ホテルが足りないということは、言われるほど需要がない証拠だから、国がわざわざ後押しをしても成功しないという意見もあれば、そんなに需要があるのであれば、民間が勝手に進出するはずだ。そんな意見もあるでしょう。

しかし、高級ホテルにおいては、賢くやれば国の後押しも有効だということは、世界の観光ビジネスでは常識となっています。その最たる例がアメリカのフロリダ州オーランドの開発だと、前出の原忠之氏は指摘しています。

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