政府「高級ホテルを50カ所」に反対する人の盲点 「地方の良質な雇用」を増やす賢い投資になる

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それをわかっていただくために、そもそもの大前提として知っておいていただきたいことがあります。それは、現在の日本の観光業を盛り上げるためには、「政府が果たすべき役割」と「民間が果たすべき役割」があるということです。

来年、2020年に、政府は外国人観光客4000万人、観光収入8兆円の目標を掲げています。

観光客数に関しては、ビザの条件緩和、日本政府観光局による情報発信、直航便や客船の誘致などの施策がうまく機能してきたことで、4000万人という目標も現実味を帯びてきました。観光客数に関しては、政府の役割が大きいです。

一方で、まだ十分ではないところがあります。それが「観光収入」です。

日本には多くの外国人観光客が訪れるようになったものの、アメリカやタイなどほかの観光立国と比べると、観光客が十分にお金を使っていないのです。2018年、観光収入自体は世界9位まで大きく増えていますが、2020年の目標である「観光収入8兆円」は難しいでしょう。このままいくと6兆円台にとどまる見通しです。

観光収入は、訪れた外国人を相手に民間がどれだけ稼いだかを計るものです。訪日客数の目標は達成されそうなのに、観光収入の目標達成が難しいということは、民間部門がまだ期待されるほどの収入をあげられていないことを意味します。

私が2015年に上梓した『新・観光立国論』から繰り返し指摘してきたことですが、どんなに観光客が訪れても、観光収入をあげなくては日本経済への効果は限定的です。とくに、昨今問題となっているオーバツーリズム(観光公害)を考えるにあたって、この点が重要です。

住民にとって、観光が盛んになることにはメリットとデメリットがあります。私はこのデメリットがメリットを上回る状態がオーバーツーリズムだと考えています。

メリットを増やし、デメリットを減らす。そのためには、「観光客1人当たりの観光収入」を増やす必要があります。だから政府は、さまざまなやり方で1人当たりの観光収入を上げるための支援に動いています。

その1つが、「高級ホテル50カ所開発」なのです。

「宿泊」「飲食」が観光収入の半分弱を占める

なぜそのような結論になるのでしょうか。世界の外国人観光客の消費動向を分析すると、その理由がわかります。

観光客1人当たりの収入が極めて高いアメリカの場合、なんと観光収入の46%を飲食と宿泊が占めています(2018年、U.S.Travel Associationのデータ)。観光客が使うお金の半分弱です。両者の役割は非常に大きいのです。

この事実からは、誘致した観光客の懐事情に合った単価のホテルに1日でも長く滞在してもらうことこそ、観光戦略の基本中の基本であることがわかります。宿泊費も飲食費も、滞在日数に比例して増えるからです。

極端な言い方をすれば、文化財を整備したりアクティビティーを充実させたりするのは、滞在期間を延ばすための「手段」でしかないとも言えるのです。

このように、観光戦略を賢く実行するには、宿泊戦略は非常に重要です。中でも、観光収入と強い相関関係があるのが、「高級ホテル」なのです。観光収入と5つ星ホテルの数の相関係数を計算すると、なんと0.911。非常に強い相関関係が見られます。

5つ星ホテルは宿泊も飲食も単価が高いので当然の結果と言えますが、もう1つ相関を強めている要素が「多様性」です。

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