交通死亡事故がコロナ禍でかえって目立つ皮肉 事故自体は減っても死亡率は上昇している

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
6月26日、この春、新型コロナウイルスのまん延に伴うロックダウン(都市封鎖)により、交通量が大幅に低下し、自動車事故の件数も減少した。写真は4月、交通量の減ったマンハッタン市中(2020年 ロイター/Mike Segar)

[ロンドン 26日 ロイター] - この春、新型コロナウイルスのまん延に伴うロックダウン(都市封鎖)により、交通量が大幅に低下し、自動車事故の件数も減少した。だがロイターが分析したところ、いくつかの都市では、車が少なくなった道路でドライバーたちが速度を上げるようになったため、死亡事故が起きる可能性はむしろ高くなっていることが分かった。

ニューヨーク市では4月、交通事故全体に占める死亡事故の比率が前年に比べ167%上昇。同じく、シカゴでは292%、ボストンでは65%の増加となった。欧州では、スペインのマドリッドで、死亡事故の比率が470%も上昇している。

交通量が激減しているのに道路の危険性が増している、という状況は米国全土に見られる。米国安全性評議会は運転距離1マイルあたりの死亡率について、今年4月は前年同月比で37%上昇したと述べた。

「無謀運転が公然と解禁されたように見える」

同評議会は5月、ロックダウンと交通渋滞の減少で「無謀運転が公然と解禁されたように見える」との声明を出した。

米オハイオ州における調査によれば、クリーブランド、シンシナティ、コロンバスでは、3月28日から4月19日にかけて平均速度の上昇はわずかだったものの、大幅な速度超過で運転していたケースは劇的に増えたという。

オハイオ州立大学の都市・地域分析センター所長、ハーベイ・ミラー教授(地理学)は、「速度超過はあまりにも酷い。本当にショックを受ける」と話す。「交通量の減ると走行速度が上昇するという事実は、交通量の多さがスピードを抑制する大きな要因になっているという証拠だと考えられる」

欧州交通安全協議会がまとめた報告によれば、ベルギーやデンマークなどでも同じように高速運転の増加が見られるという。

もちろん多くの場所では、交通量が減少した結果として事故の死者数そのものは減っている。ニューヨーク市における4月の衝突事故件数は4103件で、前年同月の1万6808件より76%も減った。同じく、死亡事故は20件から13件に35%の減少。だが、衝突事故1000件あたりの死亡事故件数は、逆に1.2件から3.2件に増加している。

街路の安全性や自転車、徒歩、公共交通機関による移動を提唱するニューヨーク市の団体「トランスポーテーション・オルタナティブ」の広報担当者ジョー・カトルフォ氏は、「市街地の道路では、衝突といっても速度は低く、フェンダーが凹む程度の軽い事故で済む」と語る。「ドライバーが飛ばすようになれば、そうした事故も死亡につながる可能性が高くなる」

次ページ教訓は何か
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事