台数はもちろん、明らかな壁だ。テスラが1000万台を生産、販売するということが実現するシナリオとはどのようなものとなるか、考える必要がある。
テスラ支持者はこういうだろう。自動車はすべて電気自動車になる。既存のメーカーは、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジンの車のシェアが高いだけで、電気自動車だけに限れば、テスラはすでに世界一のメーカーだ。世界がすべて電気自動車になると考えれば、テスラはすでに世界一も同然だ。とすれば、現時点でいかなる自動車メーカーよりも時価総額が大きくて当然だ。
そもそも電気自動車が100%になるかどうかさえ、かなり意見が分かれるところだが、仮にこれが実現するとしよう。環境規制、世界的なブームにより、あり得ないシナリオではない(実際、単なるエコというファッションであり、発電もバッテリーも環境負荷は高い。だがエコとして正しいかどうか、社会として望ましいかどうかは別だ)。
すべて電気自動車になると、テスラはどうなる?
では、そのとき、自動車の世界はどうなっているか。
電気自動車オンリーになるためには、世界全体での政策、政治的な意思決定が必要である。コストはどう考えても割高だし、利便性は悪いし、実用性、汎用性においてはリスクがある。成熟国の大都市を除けば、電気自動車に、政策的補助がなければ、基本的に購入に動くインセンティブは自動車購入者にはない。したがって、世界的に、電気自動車を強制し、かつ経済的なインセンティブが与えられるだろう。
これは技術革新競争ではない。そして、政策や政治の動きというものは、遅いし、誰の目にも明らかなので、その流れに追いつけない、ということはあり得ない。したがって、政策の流れができれば、すべての自動車メーカーがその流れに乗っていくだろう。
現在、テスラが先行してきたのは、その流れが明白でなかったために、ほかの自動車メーカーが全力で電気自動車シフトをしなかったからだ。もし、すべての自動車が電気自動車になるのであれば、その流れはすべてのメーカーで加速する。そうなると、テスラが、いまのポジションを維持できる、と考えるのは難しくなる。なので、このシナリオは、テスラにとって厳しいシナリオとなる。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら