テスラの株価もマスク氏の報酬も超バブルだ 時価総額はトヨタ超、マスク氏報酬は6兆へ?

✎ 1〜 ✎ 89 ✎ 90 ✎ 91 ✎ 最新
著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

このとき、テスラは、まだ生産台数が少ないから生き残りやすいという考え方もある。一方で、財務的にリスクをとりすぎているから、やはりトヨタの方が有利だ、との両方の見方もある。いずれにせよ、テスラの高い株価を正当化するのとは逆の方向だ。テスラは所詮、重厚長大産業の古い産業、古い商品の領域のプレーヤーなのである。

「ステイタスブランド」というおいしいポジション

しかし、より大きな壁となるのは、テスラ車の価格の維持、1台あたりの粗利益率の維持の難しさだ。

そもそも、なぜテスラは今高いのか。それはバッテリーが、という答えが来るだろうが、間違いだ。

ここでの問題は「どうみても割高なのに、なぜテスラ車を買う人がいるのか」という問題である。

答えは、当然、ブランドだからである。

テスラ、というブランドを買っているのである。

テスラに乗っている、ということがステイタスなのである。環境意識が高い、世の中でもっとも進んでいる、人とは違う、自分もイノベイティブだ、など、自己主張のために買っているのである。

このようなステイタスブランドの利益率はものすごく高い。なぜなら、価格は高ければ高いほど、ステイタスとして意味があるからである。普通の人には入手できないほど高い。それを持っているのはごく限られた人である。誰もが買えれば、ステイタスブランドにはならない。

そうであれば、そのブランドになりたい、そのようなブランドを作りたい、と誰もが思うであろう。もしコストは低く、販売価格がべらぼうに高ければ、楽に儲かって仕方がない。

実際、ファッションブランドはほとんどがそうだ。もともとアパレルの粗利はものすごく高く、販売価格に対する小売店の仕入れ値は、物にもよるが著しく低い。例えば「バーゲンで7割引!」という商品をネットで見つけても、実際売るほうは、売れれば「ぼろ儲け」という場合もある。

工業製品でこういうことは、普通はあり得ない。それなりにコストがかかるし、安くできるのであれば、安く作って売るところが出てくるし、テレビなんてどのブランドでも同じだ、パソコンもそうだ、スマホは今後そうなるかもしれない、ということだ。

自動車は、かつてはステイタスブランドの筆頭で、自己表現の手段の最たるものであったのである。

それが廃れてきた。それが「若者がデート用に車を買わない」「高い車が売れない」ということであり、利益率の高い車は、日本で言えば、極端な反しバブル世代以上、中高年が、若いころの夢を実現するために買っているだけとなっているのである。後は、起業家などの成金が異常に高い車を乗り回して喜んでいるような具合だ。

では、そういうフラッシーな人々を嫌悪するサークルに生きている富裕層、ビジネスの成功者は何に乗るか。かつてはカルフォルニアではプリウスだったが、一般的になりすぎて、また安くなりすぎて、それがテスラに取って代わられている。

そういうポジションにテスラはいるのである。

だから、ほかの電気自動車はエコと燃費だけを売りにしているので、しょぼいデザイン、あるいは既存の車のボディに乗せているのに対して、テスラは新しい斬新なデザインで、ほかと区別がつく、街中で誰もが、あれはテスラだ、と認識できるデザインにして、非常に高い価格設定を実現しているのである。

次ページもしテスラが世界一の生産台数になったら?
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事