テスラの株価もマスク氏の報酬も超バブルだ 時価総額はトヨタ超、マスク氏報酬は6兆へ?

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では、これは世界一の生産台数を誇るメーカーになったらどうなるか。

あり得ないことがわかるはずだ。

価格は一般化せざるを得ないし、ステイタスブランドではなくなる。ポルシェよりもフェラーリ、それよりもランボルギーニが意味があるのは、手に入らない、生産台数が限られているからに過ぎない。

テスラも、簡単に作れるものであるのに、テスラという未熟なメーカーが作っているから、なかなか生産台数が増やせない。だからこそ、ステイタスブランドでいられるのであって、普通に効率的に生産できれば、ステイタスではなくなるから、激しい値崩れを起こすであろう。そうでなければ、台数は売れないし、そうなれば、利益率は下がり、普通の生産台数の少ない自動車メーカーになるだろう。

したがって、テスラは「生産台数トップ」の壁も「利益率を維持する壁」も高すぎて越えられない。ファンダメンタルズ、業績から行けば、いつになっても、現在の株価は正当化できるようにはならない。したがって、現在の株価は明らかにバブルなのである。

しかし、バブル的な株価が維持されている企業はこの世にたくさんあるので、すぐにテスラ株が暴落するわけでない。投資家たちが大方売り抜けて、バブルに飽きたら、バブルあることをやめ、崩壊するだけのことだ。

テスラ株はいかなる意味でもバブル

最後に、「自動運転などの技術革新でテスラがほかを圧倒する。真に技術のアドバンテージを持っているから、世界一になる」、というシナリオが残っているじゃないか、という声もあるかもしれない。そう信じたい人々もいるかもしれない。

しかし、それもあり得ない。前述のように、そうであれば、トヨタの方が、同じ自動車という用途の中で、実験や進歩、革新を得ていくわけだから、経験値、実績値、既存の顧客の多さというのがアドバンテージになるはずだ。

いや、むしろ「身軽な技術だけに絞った、研究開発に絞った方が強い」、というかもしれない。だが、そうであれば、テスラはメーカーであり、すでにトヨタと同じように不利だ。アルファベットのようなグループ、あるいは、それだけに絞った新興企業が有利なはずで、テスラではない。

テスラもトヨタも、誰と組むか、ということであり、その組み方で勝敗が決まる。その意味では、テスタとトヨタと五分五分というのなら、まだ合理的かもしれない。ただし、それなら株価も五分五分であるはずで、テスラの株価は、現在の10分の1以下になるはずだ。

よって、テスラの株価は、いかなる意味でもバブルなのである。

小幡 績 慶応義塾大学大学院教授

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おばた せき / Seki Obata

株主総会やメディアでも積極的に発言する行動派経済学者。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現・財務省)入省、1999年退職。2001~2003年一橋大学経済研究所専任講師。2003年慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應義塾大学ビジネススクール)准教授、2023年教授。2001年ハーバード大学経済学博士(Ph.D.)。著書に『アフターバブル』(東洋経済新報社)、『GPIF 世界最大の機関投資家』(同)、『すべての経済はバブルに通じる』(光文社新書)、『ネット株の心理学』(MYCOM新書)、『株式投資 最強のサバイバル理論』(共著、洋泉社)などがある。

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