しかし、ビジネススクールでイノベーターのジレンマを学んだ人々は、こう反論するだろう。既存のプレーヤーは、イノベーションに気づいても、既存の顧客、技術を維持することが合理的であることから、思い切ったシフトができない。テスラは電気自動車しか持っていないので、全力でいける。これにより、イノベーターは交代し、新規参入者が勝つのだ、と。
既存メーカーには本当に脅威なのか?
しかし、これは違う。なぜなら、政策によって流れが決まるのであるから、技術の合理性、顧客の志向とは無関係だから、既存のプレーヤーが遅れることはない。
同時に、技術的には、既存の大手自動車メーカーなら、電気自動車を作ることはできる。技術的に遅れることはない。むしろ、それが問題で、誰でも参入できる、実際、テスラが参入できたわけだから、技術的に遅れるということはない。
よく「バッテリーの技術は違う」と言われる。だが、これは誰もがわかっていることで、多くのプレーヤーが狙っている。しかも、バッテリー技術の進歩は、実現すれば、自動車だけでなく、多くの領域に波及するから、もともとバッテリーに強いメーカーの方がアドバンテージもインセンティブもある。テスラがポジションを利用して、そのようなバッテリー技術を独占しようとしても、現実的にそうはならないだろう。
そもそも、電気自動車もガソリン車も車は車だ。用途が革命的に変わるわけではない。技術革新により、未来は今想像もしなかったような車の使い方が生まれるわけではない。だから、既存メーカーにとって特に怖くはないのだ。
むしろ、自動運転やカーシェアの方が革命を起こす可能性がある。
もちろん、既存のメーカーはこれをわかっているから、そちらへの投資競争は激しい。自動運転については、米グーグルなどの先端AI技術のプレーヤーが主導するのか、あるいは自動車メーカーが主導なのか、それが大きな違いだが、両グループが共同でやることになるのは間違いがなさそうだ。どのメーカーが勝ち残り、どのメーカーが衰退していくかというのはあるが、それはテスラも既存のメーカーも、同じ土俵に乗っていると言える。
カーシェアはもっとも恐ろしいインパクトがあり、自動車メーカーがすべて潰れるリスクがある。なぜなら、世界での自動車の必要台数が、5分の1以下になるという試算もあるくらいで、ともかく、総台数が激減するから、産業全体が危うい。
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