ヘルパーが描く「介護漫画」が共感されまくる訳 現場で働く漫画家の彼女が人生で得た悟り

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認知症の家族を抱える人たちなど、さまざまな人たちの声を聞き吉田さんの胸は熱くなった。

「認知症の人にはそれなりの理屈がありますから、それがわかれば接するのはそれほど難しくない場合が多いです。まず、認知症の人って、同じことを何度も聞きます」

「テレビリモコンどこだっけ?」と聞かれて、「棚の上だよ」と教えてあげても、数分後には「テレビのリモコンどこだっけ?」と同じ調子で聞いてくる。

「何回も言ってるよね!!」と言ってはいけない

その内、聞かれる側にストレスがたまって

「何回も言ってるよね!!」

とつい声を荒らげてしまう。

認知症の家族を介護している人には心当たりがあるかもしれない。

「本人は質問をしたこと自体をさっぱりと忘れています。だから、こちらも何度でも『棚の上だよ』と同じ調子で答えてあげるのがいいんです。あんまり同じことを言うようでしたら、『庭の花きれいだよね』『今日は何を食べたい?』など気をそらしてあげるのがいいと思います。

傷つけないように、否定しないように、気を使って接するのが何よりです。私たち他人よりもむしろ、家族のほうがあけすけに文句を言ってしまい、こじれる場合が多いです。

認知症の人たちって『やりとりしたこと』自体は忘れるんですけど、そのときの『感情』は忘れていないんです。怒鳴られて嫌な気持ちになったという『感情』だけは残ります。それでやりとりは覚えていなくても『この人の顔を見ると嫌な気持ちになる』という状態になってしまう場合があります。親子がそういう状態になってしまったら、とても残念ですよね」

『消えていく家族の顔 ~現役ヘルパーが描く認知症患者の生活~』

吉田さんが優しい口調で言う

「やりとりは忘れても、そのときの感情は忘れない」

という言葉に、胸を打たれた。

それは家族以上に、認知症の人たちの介護をしてきた、吉田さんだからこそ気づくことができた事実だろう。

「感情は忘れない」

というのは、介護するうえでの煩わしさになるかもしれないが、でもそれ以上に家族にとっての希望になりうるのではないか? とも思った。

村田 らむ ライター、漫画家、カメラマン、イラストレーター

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むらた らむ / Ramu Murata

1972年生まれ。キャリアは20年超。ホームレスやゴミ屋敷、新興宗教組織、富士の樹海などへの潜入取材を得意としている。著書に『ホームレス大博覧会』(鹿砦社)、『ホームレス大図鑑』(竹書房)など。

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