優秀な人が去り「ぶら下がり」増える組織の病巣 安易な離職対策で働きがい重視の人材が離職

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「今年は離職者がほとんど出なかった」「直近で辞めそうな社員はいないはず」と安心していませんか? 単に離職できない人々が、モチベーションも生産性も低いまま居続けているかもしれません。

とくに今回のコロナ禍により、社員にとって転職をしようとする「精神的ハードル」が上がったことが考えられ、会社への貢献意欲の低い社員が消極的に定着していくことが想定されます。ぶら下がり人材が増えていけば、モチベーションが高く優秀だった人材にまで悪影響を及ぼし、組織活性にとって大きなマイナスとなります。

安易な離職対策で「働きがい」重視の人材が離職する

近年は、離職を防ぐ目的で「働きやすさ」を改善する施策を導入している会社が多く見受けられます。ところが、もし、「より成長できる環境で働きたい」といった「積極的離職」(ステップアップのための前向きな離職)が起きている組織ならどうでしょうか。いくら「働きやすさ」を改善させても離職は防げません。なぜならば、積極的離職は「働きがい」が失われたことで起こるため、「働きやすさ」を上げたところで、予防にはつながらないからです。

それどころか、「働きやすさ」が増すことによる副作用として、“「働きがい」がなくても「働きやすさ」があるのであれば、会社に多少不満があったとしても、このまま居続けよう”という消極的定着=ぶら下がりが増加していきます。その結果、組織活性が低迷し始め、「離職対策として導入した施策によって、ますます会社がダメになっていく」という不思議な現象が起こってしまいます。

仕事に対して前向きに取り組んでいる人の多くは、「働きがい」を重視しています。「働きやすさ」を過度に追い求めることは、「働きがい」重視の人材の離職につながることもしばしば起こる現象です。

一方、「働きがい」を増やす施策は、少し複雑です。「働きやすさ」への施策は、働きにくさを解消するという「マイナス状態をゼロに持っていく課題解決施策」である一方、「働きがい」の施策は、「自分の強みを生かす」とか「帰属意識を高める」といったように、「ゼロ状態をプラス状態に持っていく施策」です。そのため、具体的にどうすればいいのかわかりづらいのです。

しかも、それらの施策は、人事担当の範疇を越えて、経営陣の判断が必要なテーマとなることも大いにあります。人事担当者としては「経営者に働きかけるよりは、とりあえず自分たちでできる施策を」となりがちで、結果として「働きやすさ」につながりそうな施策に飛びつくこともよく起こります。

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