田中みな実の怪演が話題!「M」がヒットの理由 「博多通りもん」の売り上げにまで貢献した

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また菓子製造販売の明月堂(福岡市)が販売するまんじゅう「博多通りもん」の売り上げにまで貢献しています。ドラマの中で身に着けている「眼帯」が「通りもんにそっくり」だという声がSNSで相次いだのがきっかけです。先の6月13日番組会見で明月堂は「『通りもん眼帯』のおかげで、博多通りもんの売り上げが上がりました。ありがとうございます」というコメントを寄せ、その後、番組提供者にも並んでいます。

90年代の世界観の描き方も盛り上がりの理由のひとつ

さらにABEMAプレミアム限定で田中みな実主演のスピオンオフドラマ『L 礼香の真実』の配信を6月27日から開始したところです。本編最終話の放送・配信直前に話題のピークを作る役目まで担っています。

ドラマ『M 愛すべき人がいて』の盛り上がりの理由をもうひとつだけ付け加えるとすると、90年代の世界観の描き方も独特なアレンジを加えていたことが挙げられます。

浜崎あゆみをはじめ、90年代の音楽シーンを彩った楽曲が劇中で流れる(画像:(C)テレビ朝日/AbemaTV)

「EZ DO DANCE」「BOY MEETS GIRL」(TRF)や「恋しさと せつなさと 心強さと」(篠原涼子)といった懐かしい楽曲も劇中で流れ、FAXで送るラブレターといった描写も時代感を募らせます。番組スマホ限定特設サイトではアユのガラケーから「A VICTORY」のサイトが見られるといった妙に凝った仕掛けもあります。

そして何より、街中にあふれていた「ジェネリックあゆ」を再現したかのような、安斉かれんの役作りならぬ「ジェネリックあゆ作り」にもこだわりを感じます。ネット上では「棒演技」という言葉が並びますが、これも狙いのひとつではないかと勝手に推測してしまいます。90年代に流行し、多くの浜崎あゆみファンが愛読していたと言われる「ケータイ小説」と共通する場慣れ感のないよさだと思えるからです。

7月4日の最終回直後に配信されるスピオンオフドラマ『L 礼香の真実』では『M』の2年後が描かれる(画像:©AbemaTV,Inc./テレビ朝日)

こうした細かい芸が詰まっているだけに、せっかくの盛り上がりも一過性のもので終わらせてしまうのはもったいなくも思えます。協業するテレビ朝日とABEMAの共同制作ドラマということで、グループが総力を挙げた同時展開が実現し、現在の若年から90年代に若者だった世代にまでリーチされています。地上波放送ではリアルタイムの一本勝負ですが、ABEMAでは見逃した層など新規獲得をまだ仕掛けていくこともできます。そこでも、引っ張る力量は田中みな実に掛かっているのかもしれません。

長谷川 朋子 コラムニスト

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はせがわ ともこ / Tomoko Hasegawa

メディア/テレビ業界ジャーナリスト。国内外のドラマ、バラエティ、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。最も得意とする分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。フランス・カンヌで開催される世界最大規模の映像コンテンツ見本市MIP現地取材を約10年にわたって重ね、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威ある「ATP賞テレビグランプリ」の「総務大臣賞」の審査員や、業界セミナー講師、札幌市による行政支援プロジェクトのファシリテーターなども務める。著書は「Netflix戦略と流儀」(中公新書ラクレ)。

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