番号順にリストラされる「米国流整理」の理不尽 日本の年功序列とは似て異なる驚きのルール
こうした中、さまざまな業種で「レイオフ」が現実味を帯びている。
日本では人員整理のことを一般的に「リストラ」と呼び、業績悪化などによる解雇を意味する。だが、アメリカでは「レイオフ」(一時解雇)という言葉が使われる。業績が回復するまでの間の一時的な解雇という意味で使われ、業績が回復したら再雇用することを視野に入れている。
「レイオフ」は復帰も想定した一時的な解雇なのだから、日本の「リストラ」よりマシなのではないか、というと、そうでもない。
この「レイオフ」に関しては、日本企業にはほとんど見られない驚きのルールが埋め込まれていることがある。それが「シニオリティ・ルール」(Seniority rule)だ。
古株であるほど得をする「シニオリティ・ルール」
これは、従業員の昇進・異動・休職・解雇などを決定する際、勤続年数が長く、古くから在籍している従業員が、後から就職した者よりも有利な扱いを受けられる権利のことだ。
従業員の経験やスキル、ノウハウを他社に流出することを防ぐのが狙いとされるが、実際の運用はというと、なかなかハードだ。入社順に「0001、0002、0003……」と1人ずつ番号が割り振られ、後から入社した者、つまり番号が大きい社員から有無を言わずにレイオフされてしまうこともある。
「得なことは社歴の長い人から優先的に、損なことは新参社員から真っ先に」というこの仕組み。アメリカやカナダなどでは、労働組合が強い業種で多く採用されているが、目下、悲鳴が上がっているのは、航空業界だ。
アメリカの航空会社に勤務するAさんが語る。
「航空業界で長く働くCAとパイロットは、このルールで大きな得をしています。例えば新人CAが夏休みを取るため、2カ月前にリゾート地までのフライトの最後の1席を予約してあっても、当日の朝、番号の小さいベテランCAが、『バカンスを取るからこの便に乗りたいの」と言えば、そちらが優先、新人CAは泣く泣く諦めなければならないのです」
驚くほかないルールだが、今回の新型コロナによる緊急事態においても、その威力を発揮。古株の従業員であれば、よほど悪いことをしない限りレイオフされることはなく、安全でいられるというのだ。
「中には50年以上飛んでいるという75歳の元気なCAもいます。アメリカのCAは、乗客から荷物をあげてくださいとヘルプを頼まれても、“私はそういうことができません”とか、“私は手が届かないからダメです”とか、はっきり断る人もいるのですが、それもシニオリティ・ルールの恩恵かもしれません」 (Aさん)
ベテランが守られる、はた目にはシニアに温かい業界には、新しいメンバーが冷遇されるという裏事情があったのだ。
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