新型「アコード」は、なぜクーペ風になったのか ホンダがセダンをファストバック化する理由

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もうひとつの注目は2830mmというホイールベースで、旧型より55mm長い。全長と合わせて考えると、前後のオーバーハングが一気に100mmも短くなったことになる。

真横から見ると、フロントオーバーハングが旧型より短くなったことがわかる。さらにノーズは低く短くせず、顔まわりにボリューム感を持たせるとともにフロントピラーを後方に移動しており、後輪駆動車を思わせるプロポーションになった。

なだらかなルーフラインも印象的だが、フロントオーバーハングの短さに注目(筆者撮影)

プラットフォームも新開発だ。発表資料には低重心・低慣性を目指したとある。全高の低さとフロントオーバーハングの短さは、このプラットフォームを採用したからこそ実現できたわけだ。

つまり、同じファストバックでありながら、アコードはシビックとは大きく違うプロポーションを持つ。開発の順番ではアコードの後になるインサイトは、ノーズやリアまわりの造形をアコードに近づけているが、プラットフォームはホイールベースを含めてシビックと共通なので、ノーズの中での前輪の位置はシビックと同じだ。

サイドのキャラクターラインも、リアに向けてせり上がるシビックやインサイトとは対照的に、アコードではほぼ水平で、むしろリアにいくにしたがい少しずつ下がっている。フェンダーの張り出しも穏やかで、躍動感を強調したシビックに対してエレガントな佇まいを持っており、似ているようでかなり違うことがわかった。

端正な雰囲気だが質感はいま一歩

インテリアはまず、運転席に腰を下ろしたときの着座位置の低さが印象的だ。宮原氏によれば、モデルチェンジのたびに上がってきていたそうで、今回はそれを一気に下げたという。

こうなると前方視界が気になるが、シビックやインサイトと同じようにインパネの高さが抑えられているので、水平面に近いエンジンフードはよく見えるし、フロントウインドーの傾きはそれほど強くないので圧迫感もない。

インパネはドライバーを囲むような造形のシビックやインサイトに対し、左右対称のT字型となる。

レザーシートは標準装備。ブラックのほか、アイボリーも設定される(筆者撮影)

「インテリアには、旧型との方向性の違いも込めています。旧型はディスプレイを上下に2つ並べたり、多くのスイッチをちりばめたりして、技術をアピールすることを優先していました。新型ではそのあたりをシンプルにして、広さに驚いてもらうつもりで作りました」(宮原氏)

たしかに端正な雰囲気で、仕上げは丁寧だ。ただ、全般的にかつてのアコードを知る者にとっては保守的な感じを受けたし、トリムの革シボや木目調パネルの仕上げは、465万円という価格に釣り合っていない感じもした。

日本では先に発売されたインサイトのほうが、インパネ助手席側にソフトバッドを使ったりダブルステッチを起用したり、より凝った内容になっているし、今年5月にはエクステリア/インテリアともに個性的なカラーを加えている。アコードの7日前に発売となった新型「フィット」では、シンプルでありながら心地いい新鮮な提案をしてきていると思ってしまう。

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