SUVブームの背景にある「ドレス効果」とは何か 顧客は「本格派」のイメージで買っている
日本市場では今、SUV(スポーツ・ユティリティ・ビークル)が花盛りだ。SUVがはやる要因は多々あるだろうが、筆者はその最大の理由を「ドレス効果」ではないかと見ている。
あおり運転による重大過失事件の報道などで、最近よく目にするようになった、ドレス効果という言葉。
人は、制服や高級服などをまとうと、緊張感が高まるなど気持ちが高揚する、といった心理現象を指す。高級車を運転すると、ドレス効果によってあおり運転に陥りやすいという考え方だ。
そこでSUVのドレス効果について、さまざまな事象をもとに深堀りする。まずは、日本でのSUVブームの状況について見てみよう。
6月1日、同月中に発売するトヨタ新型「ハリアー」と、プラグインハイブリッド車「RAV4 PHV」の一部メディア向けプロトタイプ試乗会が、袖ヶ浦フォレストレースウェイ(千葉県袖ケ浦市)で開催され、ネットメディアを中心に情報が拡散した。
小型SUVではトヨタ「ライズ」が販売好調で、コロナ禍の5月でも登録実績はハイブリッド車の定番「アクア」に次ぐ2位につけた。
6月15日には、日産の北米事業統括会社である北米日産が新型「ローグ」の情報を公開。同車は日本導入の次期「エクストレイル」と兄弟車になる公算が高いため、ローグ関連のニュースが日本でも広まった。
軽自動車でも注目の新作SUVが出た。6月10日に発売された、ダイハツ「タフト」だ。タフトは、前席に大きなガラスルーフ「スカイフィールトップ」を全車標準装備し、軽クロスオーバーSUV市場で先行するスズキ「ハスラー」に対抗する。
先行予約は「月販予定台数4,000台の2倍以上」(ダイハツ)と出足好調だ。
このほか、今年後半から来年にかけて、前出のエクストレイル、その兄弟車となるであろう三菱「アウトランダー」、国内最上級本格派SUVのトヨタ「ランドクルーザー」と、注目モデルが続々とフルモデルチェンジを控えている。
こうしたSUVのトレンドは、いつどのようにして生まれのだろうか。
三菱「パジェロ」のマーケティング戦略
SUVに近いイメージとして、RV(レクリエーショナル・ビークル)がある。
1980年代に入り、日本では三菱「パジェロ」がRV市場の牽引役となった。それまで山林などでの作業車として使われることが主だった4輪駆動車を、キャンプなどアウトドアのアイテムとして使うというマーケティング戦略だった。
過酷なパリダカールラリー(現ダカールラリー)にも挑戦する本格オフローダーを街乗りでも使うことが、“仕事も遊びも大胆にこなす強い男”を感じさせるとして、パジェロは幅広い年齢の男性ファッションの一部となった。
このRVという言葉、実は“ほぼ日本市場向け”の造語で、海外ではあまり使われていない。
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