SUVブームの背景にある「ドレス効果」とは何か 顧客は「本格派」のイメージで買っている

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海外に目を向けると、SUVブームの起源はアメリカにある。筆者は1980年中盤からアメリカの東海岸、南東部、西部などで居住し、全米各地でSUVの変遷を実体験してきた。

最初のトレンドは、1984年に登場したジープの2代目「チェロキー(型式XJ)」だ。このチェロキーは、1980年代後半には日本でのパジェロのような存在になった。

ジープ「チェロキー」は1990年代前半に日本でもヒットした(写真:FCA)

1990年代に入ると、フォード「エクスプローラー」とシボレー「タホ」が登場。これらは、梯子型の車体構造であるラダーフレームを持つ、ピックアップトラックをベースとしたものだ。

同時期、ピックアップトラックでもフォード「F150」、シボレー「C/K1500 (現シルバラード)」、当時のクライスラー・ダッジ「ラム」なども、SUV同様に男女を問わず幅広い年齢層に乗用車として使われるようになった。

当時、GMやフォードのメディア向けイベントなどで、SUVユーザーの声を実際に拾ったが「ボディが大きいから、もし事故にあっても安心できる」「荷物がたくさん積め、家族みんなが一緒に乗っても窮屈ではない」「目線が高くて運転が楽」といったコメントが主流だった。

ガソリン価格がリッター換算で40~50円だったこともあり、5リッター級の大排気量モデルに人気が集まった。

ランボルギーニやロールスロイスも参入

1990年代後半になると、メルセデス・ベンツが自社初となるSUV「M(ML)」クラスを北米で生産し、BMWも「X5」を市場導入。さらに日系プレミアム3(レクサス、アキュラ、インフィニティ)やアメリカのラグジュアリーブランドであるリンカーンやキャデラックも、続々とSUVを発売した。2000年代にはポルシェも「カイエン」でSUV市場に参入する。

シボレー「タホ」「サバーバン」、キャデラック「エスカレード」など、GMの主力SUVを生産するテキサス州アーリントン工場内での式典の様子(2011年7月、筆者撮影)

2010年代に入ると、中小型セダンからSUVシフトが一気に進み、アメリカ市場でのシェアはSUVが4割、セダンなどが4割、ピックアップトラックが2割と、SUV比率が上昇。今後も、さらなるSUVシフトが予測されている。

ユーザーからは、1990年代と同じように、仕事にも遊びにも使える「オールマイティな利便性」を重視しているとの声が多い。

中国でも海外でのSUVシフトの影響もあり、30代を中心に生涯2台目の新車として、それまで中国での定番だったセダンからSUVに乗り換える傾向が強まった。

こうした米中でのSUV市場拡大を受けて、欧州の超プレミアムブランドがついにSUVを投入。ベントレー「ベンテイガ」、ロールスロイス「カリナン」、ランボルギーニ「ウルス」がそれに当たるが、さらにフェラーリもSUV量産を予定しているという。

これらはまさに、SUVのドレス効果の証明だと言える。

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