「日本のオーケストラ」収入ゼロの辛すぎる窮状 「新日フィル」6月末までの約40公演が中止に

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お金のことばかり長々と説明したが、演奏会中止は、オーケストラ団体にもう1つの大きな影響をもたらしている。音楽の質の問題だ。

6月9日に開催された試演。演奏会の再開に向け、withコロナにおける演奏を探った(写真:新日本フィルハーモニー交響楽団)

音楽の演奏では、その規模にかかわらず、指揮者とオーケストラ、そして奏者間のコンタクト=アンサンブルが非常に大切である。例えば有名なベートーベンの「運命」の出だしはたった4つの音だが、これをぴったりそろえるのは至難の業だ。

指揮者のタクトのどこで音を出すのか、という奏者同士の「あうんの呼吸」があるからこそ、整然と音が並ぶのである。これはほんの一例で、譜面通りに奏でることに留まらず、音に情感を込める、つまり音楽をつくるために、奏者同士のアンサンブルは欠かせない要素である。

これをオーケストラは長年の、リハーサルと本番演奏の繰り返しによって培っている。4カ月に及ぶリハと演奏会の休止が、ダメージを与えないわけがない。

ソーシャルディスタンスをとって演奏する際に影響は?

さらに影響するのが、演奏者間の距離の問題だ。通常のオーケストラ配置での距離は管楽器同士なら1メートル、弦楽器同士なら70〜80cmぐらいだろうか。

【上】6月11日~12日に東京都交響楽団が感染症専門医やエアロゾル工学専門家を招いて行った試演では、飛沫の飛散が目視できなかったため、通常のオーケストラ配置とほとんど変わらない奏者間距離となり、マスクも弦楽器の半数が外した(筆者撮影)、【下】可視化装置を用いての管楽器の飛沫計測(写真:東京都交響楽団提供©堀田力丸)

感染防止の1〜2メートルの距離、さらにマスク姿では、アンサンブルに必要なアイコンタクト、弓の上下や動作による合図、息づかい、耳に入る音など、多くの面で不利になる。

現在、都内では6月21日に東京フィルハーモニー交響楽団が先陣を切って開催したが、ステージ上ではソーシャルディスタンスをとり、管楽器奏者の周囲にアクリル板を立てての演奏となった。

7月2日にサントリーホールにて開催する新日本フィルハーモニーも、アクリル板こそ取り除いたものの、専門医の立ち会いによる試験演奏等を経て、感染防止のための厳しい基準で臨む。

なお、管楽器は息によって演奏する楽器のため、現在、どの程度まで飛沫やエアロゾルが届くのかといった検証が各オーケストラなどで行われている。7月には、気流の専門家を交えた実験も、クラシック音楽公演運営推進協議会主催、NHK交響楽団等協力のもと行われる。

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