彼女の場合はほかに収入があるため4割減にとどまったが、仲間には8〜9割減になった人ももちろんいる。フリーランサーにも適用される補助金は、彼女も仲間たちも申請しなかったそうだ。ギャランティーは謝礼として封筒に入れて渡される形が圧倒的に多く、源泉徴収票もないので、収入が証明できないからだ。
「確かに厳しいけど、慣れている。私たちフリーは、バブル崩壊、大震災などでも、真っ先に切り捨てられた。雇用形態は日雇い労働者と同じだし、ギャランティーも食べていけないぐらい少ないこともある」(深田さん)
それでも、音楽にしがみついて生きていく。彼女のすべてだからだ。
「魂がこもった音楽を聴くと、みんな癒やされるし元気をもらう。アナログで古いかもしれないけど、大事なものが詰まっていると思う。その大事なものを、一生をかけて音楽から学びたい」(深田さん)
ようやく7月に、フリー演奏家の集うサロンでの発表会が開催されるため、そのリハーサルが始まっているとのことだ。
しかし年齢や体調の問題で、感染によるリスクが高いため、仕事以外では人に会わない自粛生活を続けている。いつ倒れてもいいように、身辺整理を行ったそうだ。
音楽の復活を強く求めることが最も必要
さて、COVID‐19の対応においてひときわ印象的だったのが、ドイツ文化相の「音楽は平時だけのものではない。生命維持に必要不可欠」という言葉と、オーケストラやフリーランサーに対する支援金の即時発行である。
同国をはじめヨーロッパの国々ではかつて、音楽は命をつなぐための糧であり、また精神的な闘争の手段でもあった。そのバックグラウンドを持つ国と、クラシック音楽が導入されてせいぜい100年の日本は比べるべくもない。
しかしジャンルにかかわらず、音楽は誰にとっても必要不可欠だ。プロの従事者たち、そして、日本の厚いクラシック層を形成しているアマチュア演奏家、クラシックファンを含む視聴者たち誰もが、この原点に立ち返り、音楽の復活を強く求めることが、業界にとって今、最も必要なことかもしれない。
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