しかし、実態は大きく異なっている。オーケストラは多くが公益財団法人であり、文化芸術事業により公益に資する代わりに、税制面などでの優遇措置を受けている。そのため年度ごとに(あるいは2〜3年の期間で)収支の帳尻を合わせなければならない。つまり、利益を追求したり、お金を貯め込んではならないのだ。
まるでイソップ説話のアリとキリギリスさながら、実りのある季節は歌い暮らしているが、冬が訪れればたちまち飢えてしまうわけだ。
さらに、こうした厳しい風は、業界全体に等しく吹きつけているわけではない。
つまり、財政状況が厳しいところほどより大きい影響を受けるということだ。では、国内のオーケストラは、どのような財政の仕組みで成り立っているのだろうか。
「国内のオーケストラは、その財政基盤によって大まかに3種類に分けられます。第1が、NHK交響楽団、読売日本交響楽団など、大きな企業がスポンサーとなっている楽団。これらは事業収益のうち大きな部分を、企業との事業契約金が占めています。
次に、自主運営であり、主に演奏会収入と、民間からの寄付金によって経営を維持している楽団。日本の多くのオーケストラがこれに当てはまります。3番目が、地方自治体の支援を受けているオーケストラです」(日本オーケストラ連盟常務理事の桑原浩氏)
ちなみにNHK交響楽団の2019年度予算では、収益約31億円のうち約14億円がNHKからの交付金だ。1965年、オリンピックの記念文化事業として設立された東京都交響楽団は、収益の6割にあたる約10億円を都の補助金で賄っている。
コロナの影響で公演収入がゼロに
先述の分類で言えば2番目の自主運営オーケストラに属する、新日本フィルハーモニー交響楽団の声を聞いてみた。
新日フィルは2月29日より6月末までの約40公演が中止になり、約2億8000万円の公演収入がゼロになった。
「楽団員1人当たりのギャラは、公的スポンサーのついている楽団の3分の1です。それさえも今はカットさせてもらっている。皆様の寄付で食いつないでいる状況で、公演を再開しなければ存続できない。ただし公演を行っても、客席の距離の問題など条件が厳しく、収益にはつながりません。業界団体も政府に対し声を上げてくれていますが、うちの場合は本当に切羽詰まっています。
この状況が続けば、大きく赤字となることは避けようがない。政府には、運営の厳しい団体に対し、資本注入などの救済策をぜひ検討いただきたい」(新日本フィルハーモニー交響楽団専務理事の林豊氏)
林氏によると、同オケでは事業費のうち公的支援は10%、民間支援は10%で、80%を演奏会収入によっているという。先に挙げた1や3の分類のオケに比べ、危機に瀕していることがわかるだろう。
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