自粛不況で本当に怖いのは「連鎖倒産」の発生だ 経済が多少回復しても起こる倒産ラッシュ

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アメリカではレンタカー大手ハーツがアメリカ連邦破産法11条の適用を申請するなど、新型コロナの影響を受けて破綻する企業が出てきている(写真:REUTERS/Eric Gaillard)

新型コロナウイルスの影響で、すでに大小さまざまな企業がつぶれた。ここにはレンタカー大手の「ハーツ」やアパレルの「Jクルー」といった有名ブランドのほか、ダイヤモンド・オフショア・ドリリング、ホワイティング・ペトロリアムなど一般にはあまり名前を知られていないエネルギー関連企業が含まれる。

倒産の波は今後さらに大きくなる見通しだ。

ニューヨーク大学スターン経営大学院のエドワード・アルトマン名誉教授は、負債総額10億ドルを超す「超大型倒産」の件数は今年、過去最高記録を軽く塗りかえると予想する。アルトマン氏は、企業の倒産リスクを予測する指標として広く用いられている「Zスコア」の考案者だ。負債総額1億ドルを超える通常の大型倒産も、リーマンショック翌年の2009年を上回る可能性があるという。

経済が多少回復しても倒産は止まらない

アルトマン氏によれば、経済活動が今後数カ月である程度回復したとしても、この動きは止まらない。「本当に苦しんでいる企業はすでに手遅れの状態にあり、助からない」

崖っぷちの企業は山ほどある。アメリカ第2位の天然ガス会社に上り詰めたこともあるチェサピーク・エナジーは約90億ドルの負債に苦しんでいる。「メンズ・ウェアハウス」「Jos. A. Bank(ジョス・エー・バンク)」などを傘下に持つ紳士服のテイラード・ブランズも最近、破産保護を申請しなければならなくなる可能性があるとの情報を開示した。昨年12月に会社更生手続きを終えたばかりの油田サービス企業、ウェザーフォード・インターナショナルも同様だ。

連邦破産法第11条の適用を申請した企業は昨年6800社を超えたが、今年はこれを上回るとみてほぼ間違いない。1930年代の大恐慌以来となる不況で破産法申請が相次ぎ、システムの処理能力がパンクすれば、救えるはずの企業も救えなくなると専門家は指摘する。

会社更生手続きに入った企業は通常、債務の支払い条件を変更するなどして再建を試みる。しかし再建計画がまとまらなかったり、再建の見通しが立たなかったりすると清算手続きに入ることがある。この場合には、負債返済のために設備や資産が売却され、会社は消滅する。

現状の体制を見直さなければ、「存続可能な中小企業のかなりの部分が清算を余儀なくされ、経済的な損失は甚大で取り返しのつかないものになる」——。ある研究者グループは、5月に議会に提出した意見書でこう述べた。「本来なら生き残れたはずの企業で働く従業員までもが失業することになる」というわけだ。

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