自粛不況で本当に怖いのは「連鎖倒産」の発生だ 経済が多少回復しても起こる倒産ラッシュ
研究者グループは、退官した裁判官を復職させ、事務員を増員するための予算拡充、会社が解体され売却されるのを防ぐため会社に再建計画を練る時間的余裕をもっと与えることなどを提案している。
「締め切りが窮屈だと、再建計画が過度に楽観的となり、結果的に再申請が必要になる。そうなると裁判所の業務が増え、企業再生に遅れが生じる」と、意見書は指摘する。
ロックダウン(封鎖措置)は最近になって緩和されつつあるが、コロナ禍によってすでにいくつもの会社が破綻に追い込まれている。6月半ばに破産法の適用を申請し、100店舗を閉鎖すると発表したスポーツジムチェーンの24アワー・フィットネスも、その1つだ。同社経営トップは、完全にコロナが原因で資金繰りに行き詰まった、と述べている。
あだとなったLBO
しかし、今回のコロナ禍で長年の問題が露呈しただけの企業は少なくない。例えば、時代の変化に取り残された企業が積み重ねてきた巨額の借金がそうだ。
レンタカーのハーツは10年以上前に行ったレバレッジドバイアウト(LBO、買収先企業の資産などを担保に資金を借り入れて行う企業買収)で積み上がった負債に加え、12年に同業のダラー・スリフティを買収したことでさらに借金が膨らみ、苦境に陥っていた。ハーツを苦しめたのは同業との直接の競合だけではない。近年はウーバーやリフトといった新興ライドシェア企業の存在感が高まり、レンタカー業界の逆風が強まっていた。
Jクルーと高級百貨店のニーマン・マーカスは、プライベート・エクイティ(PE、未公開株)に投資するPEファンドが仕掛けたLBOで巨額の負債を抱え込んだだけでなく、ネット通販への対応にも悩まされていた。
ダイヤモンド・オフショア・ドリリングやホワイティング・ペトロリアムをはじめとする石油・ガス会社は、エネルギー価格が今よりもずっと高かったときに事業拡大のために多額の借金を重ねた。ところが生産能力を拡大する中でエネルギー価格は下落し、おまけにロシアとサウジアラビアが価格戦争に突入したことで、コロナの影響が本格化する少し前から経営環境の悪化に拍車がかかっていた。
さらにコロナとは無関係の案件によっても、裁判所の時間と労力は食われている。テキサス州ダラスに本社を置く1857年創業の老舗乳製品メーカー、ボーデン・デイリーは1月に破産法の適用を申請したが、倒産の原因は販売価格の低下、コストの上昇、消費者の嗜好の変化などだった。