自粛不況で本当に怖いのは「連鎖倒産」の発生だ 経済が多少回復しても起こる倒産ラッシュ

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デフォルト(債務不履行)の多発は避けられない情勢にある。アメリカの企業に積み上がる負債は今年3月末時点で約10.5兆ドルに上っていた。セントルイス地区連銀が記録を取り始めた第2次世界大戦終戦時までさかのぼっても、ここまで負債が膨れあがったことはない。

「企業債務は爆発的に増えた」とアルトマン氏は言う。

債務が巨大化しているということは、今後の破綻処理で一般債権者が被る打撃も大きくなる可能性が高い。その影響は企業年金や医療保険を受給する退職者、支払い待ちの取引業者、現在雇用されている従業員に及ぶ。仮に担保提供資産の価値が会社の清算価値を上回ったとなれば、有担保債権者(この中には債権を買いたたくハゲタカ投資家も含まれる)によって、実質的に全財産を持ち去られる展開も考えられる。

中には、問題となる債権が膨大なものとなるケースも出てくるはずだ。負債総額10億ドル以上の超大型倒産が今年は2009年の49件を大幅に上回り、66件を突破するとアルトマン氏はみる。一方、負債総額1億ドル以上の大型倒産については192件と、2009年の242件の記録に次ぐ水準になるとの見立てだ。

倒産処理の専門家で構成する「アメリカン・カレッジ・オブ・バンクラプシー」のロバート・キーチ理事の話では、現金をかき集め、節約を徹底するなどして破産法の適用申請を遅らせている企業は多数存在する。既存の融資枠を目いっぱいまで使い切り、従業員を無給で休ませ、プロジェクトを延期し、連邦・州政府の支援措置を利用するなど、あらゆる策を講じているのだ。

だが、政府の支援制度が期限を迎えると、企業のキャッシュは急速に減り始めることになる。破産申請が急増するのはそのときだ、とキーチ氏は言う。

「コロナの崖」はあと30〜60日で現れる、と同氏は語った。

怖いのは「連鎖倒産」

一般に更生手続きが長引くと、企業の清算リスクは高まる。悪影響も各方面に波及する。例えば、更生手続きが長引き、あるメーカーの競争力が失われたとしよう。そうなれば、原材料の供給業者もつぶれかねない。ショッピングモールならキーテナントの撤退がきっかけで、小さなテナントの業績が落ち込む可能性もある。

これは現実に起こりうるリスクだ、とニューヨーク州南部地区連邦破産裁判所の元判事、ロバート・ガーバー氏は話す。同氏が扱った案件の1つにゼネラル・モーターズ(GM)に対する2009年の破産法適用があるが、この案件はGMが再起不能とならないように電光石火のスピードで処理されたという。

「仮にGMがつぶれていたら、どれだけ多くの関連企業がつぶれたかわからない。連鎖倒産が雪だるま式に膨れあがっていただろう」(ガーバー氏)。倒産が連鎖すれば、関連企業の従業員の給与が吹き飛び、関連企業以外でも存続が危うくなる会社が出てくる。税収が激減し、地元自治体の財政も苦しくなる——。

これこそが、来たるべき倒産ラッシュに備えて破産手続き体制を強化しなければならない理由だ、とガーバー氏は力を込める。「破産手続きで企業の資金が増えることはない。しかし、相当数の企業に生き残りのチャンスを与えることはできるのだ」。

(執筆:Mary Williams Walsh記者)
(C)2020 The New York Times News Services

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