クッキーに落花生…名刺はここまで自由に! 単なるネームカードを超える
09年からインターネットで特殊加工の受注を始め、売り上げは5年で10倍。顧客はデザインデータ持参の個人事業主が多く、主流は100枚で1万~2万円台だが、素材に凝ったり2枚重ねにして飾り窓をつけたりした100枚10万円の名刺を注文した会社社長もいたという。
整理して保存しようと思うと、名刺は決まったサイズでなければならないが、そこから解放されればあり方は無限大だ。
経済ジャーナリストでフリーキャスターとしても活躍する谷本有香さん(41)は、テレビ局から独立したときに、深紅の紙にゴールドの英文字をあしらったカード入れに、名前やメールアドレスのほかに英語の自己紹介なども盛り込んだ小さなカードを複数枚差し込む、オリジナル名刺を作った。
人気商品をかたどる
デザイナーと構想半年。米国でMBAを取得していて経済と英語に強いことと、自身の情熱が伝わるように苦心した。カード入れごと手渡されると、まるでプレゼントだ。仕事で外国の要人にも会うが、
「驚かれなかったことがない。仕事の幅も広がり、人にも覚えてもらえるこの名刺は、運と縁をつなぐツールです」
コストをかけて名刺に単なるネームカード以上の役割を持たせる動きは、企業にも見られる。
日本マクドナルドは05年から、マックフライポテトやマックシェイク、ビッグマックなど人気の5商品をかたどったカラーの名刺を導入した。今年、ポテトとポテトが手をつなぐ新デザインを追加し、全6種類。全社員が全種類を持ち、相手に喜ばれそうなものを渡す。
同様に日清食品グループは13年秋から、カップヌードルやどん兵衛など代表的な商品23種類の形をした名刺を使う。事業会社や部署によって持つ名刺が違い、名刺交換で1枚、2枚と手にすると、もっと集めたくなる。
レシピ投稿・検索サイトのクックパッドの名刺は、個々の社員の「一番好きなレシピ」入り。12年に導入し、キッチンで実際に料理を作ってもらえるようにと、防水加工までする念の入れようだ。
名刺交換の場で会話が弾むようになったのはもちろん、マクドナルドでも日清でも、顧客がビッグマックやカップヌードルとの思い出を自然と話してくれるようになった。結果的に、
「自社のブランド力を再認識する機会が増えました」(日清の広報担当者)