クッキーに落花生…名刺はここまで自由に! 単なるネームカードを超える
「沖縄出身だから」とゴーヤーチャンプルーのレシピ入り名刺を持ち歩くクックパッド買物情報事業部の沖本裕一郎部長は、「なぜこのレシピを選んだのか」という話から故郷や家族の話まですることが増え、相手からも家族の話を聞くことが増えた。
「初対面でも相手との信頼関係を築きやすくなりました」
クッキーに社名と名前
名前と連絡先を伝えるためのものから、会話の糸口を生み出すものへ。名刺に求められる役割の軸足が、変わっているのだ。
この流れを加速させるサービスも、じわじわと浸透している。
Sansan(サンサン)は、名刺をクラウド上で管理するサービスを提供する会社。07年に始めた法人向けサービス「Sansan」を使えば、名刺をスキャンしたりスマホで写真を撮ったりするだけで名刺に書かれた情報がサーバーに保存される。顧客は2千社に届く勢いで、12年に始まった個人向けアプリ「Eight」も、すでに契約者数50万人。ユーザーは、13年になって急増した。
このSansanの社員の名刺は、クッキーでできている。今年3月の本社移転を機に、役員と、広報など一部の社員が使い始めた。サクッとした歯ごたえにバターの風味がほどよい厚さ5ミリのクッキーに、社名や名前が吹き付けられている。
「お会いして名刺交換をした方とは弊社アプリ上でも名刺交換しますし、アプリをご利用でない方にはアプリの招待メールをお送りしますので、食べていただいていいんです。弊社アプリがこのクッキーの文字を認識できることも、確認済みです」(広報部・磯山江梨さん)
老舗もこうした動きを無視できなくなった。名刺や封筒など紙製品の総合メーカー・山櫻も、5月から法人向けにバナナやコーヒーなどの匂い付き名刺の販売を始めるほか、夏には名刺版フェイスブックのようなクラウド管理サービスに乗り出す。市瀬豊和社長はこう意気込む。
「肩書が変わっても相手とのつながりが続くようなサービスを構築して、名刺交換の歴史を変えたい」
1年後、名刺はどんな素材、どんな形になっているのか──。
(AERA編集部:塩月由香、撮影:高井正彦)
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