中国政府は、自動車の燃費改善や環境に優しい新エネルギー車の普及を推進する政策を大幅に見直した。6月22日、自動車産業政策を所管する中国工業情報化省が関係4部門と共同で、具体的な政策手段である「双積分(ダブルクレジット)制度」の改定版を発表した。
2017年9月に導入されたダブルクレジット制度は、各自動車メーカーに対して平均燃費の向上と新エネルギー車生産の目標値を設定し、それぞれの達成度合いに応じて「新エネルギー・クレジット」を付与するものだ。
改定前の政策では、2020年のクレジット比率は12%に設定された。例えばあるメーカーが100万台のガソリン車を生産すると、12万単位の負のクレジットが生じる。その一方、新エネルギー車を生産すれば正のクレジットが付与される。このメーカーの新エネルギー車が仮に1台当たり4単位を得れば、3万台生産することで全体のプラスマイナスがゼロになる。
クレジットは市場価格で売買することができ、新エネルギー車の生産が足りないメーカーは電気自動車(EV)専業メーカーなどからクレジットを買って帳尻を合わせることが可能だ。そして年度末のクレジットがマイナスになったメーカーは、次年度のガソリン車の生産を削減するか罰金を支払わなければならない。
インセンティブの機能不全を改善できるか
新エネルギー車の生産比率が増えれば、そのメーカーの平均燃費は半自動的に下がる。工業情報化省はダブルクレジット制度のメカニズムにより、2025年の乗用車の平均燃費をガソリン換算で1リットル当たり25キロメートルに高めるとともに、同年の新車販売に占める新エネルギー車の比率を25%に引き上げる政策目標を立てていた。
ところが、改定前の制度は期待したようには機能しなかった。最大の誤算は、(新興EVメーカーの乱立などで)正のクレジットが増えすぎて市場価格が値崩れを起こしたことだ。事情に詳しい関係者によれば、1単位当たりの実際の取引価格は数百元(1元=約15円)にすぎないという。これほどクレジットが安ければ、ガソリン車のメーカーには新エネルギー車の生産を真剣に増やすインセンティブが働かない。
そこで改定後の制度では、クレジット比率を2021年に14%、2022年に16%、2023年に18%と段階的に引き上げるとともに、ガソリン車に「低燃費車」という新たなカテゴリーを設けた。低燃費車は生産台数に対して2021年は0.5倍、2022年は0.3倍、2023年は0.2倍の係数がかけられる。つまり、あるメーカーが2023年のガソリン車の生産をすべて低燃費車に切り替えれば、100万台生産しても制度上は20万台と見なされ、負のクレジットの発生が5分の1になるのだ。
今回の見直しは、充電インフラの整備などに時間がかかる新エネルギー車の急速な普及よりもガソリン車の燃費改善を優先し、2025年の政策目標の実現を図る現実路線と言える。なかでも改定前は通常のガソリン車扱いだったハイブリッド車(HV)にとって強力な追い風になりそうだ。
(財新記者:劉雨錕)
※原文の配信は6月22日
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