ボブ・ディラン「コロナの捉え方は無数にある」 インタビューで語った新譜、死、特別な存在…

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だが、私が聞いて育ったリトル・リチャード――。彼は私よりも前から音楽の世界にいた。私の足元を照らしてくれて、自分だけでは知るはずもなかったことを教えてくれた。だから、リトル・リチャードは私にとっては別格なんだ。ジョン(プライン)は私のあとから音楽の世界に入った。その点が違う。2人についての認識は同じではないよ。

──いろいろな曲の中で、あなたは偉大なミュージシャンを何人も称えていますね。「最も卑劣な殺人」では、(イーグルスの)ドン・ヘンリーとグレン・フライの名前を挙げていて、私は少し驚きました。イーグルスの曲の中で、お気に入りは何ですか?

「ニュー・キッド・イン・タウン」、「駆け足の人生」、「お前を夢見て」。史上最高の部類に入る曲かもしれない。

ジャズはインスピレーションを与えたか

──「最も卑劣な殺人」では、アート・ペッパーやチャーリー・パーカー、バド・パウエル、セロニアス・モンク、オスカー・ピーターソン、スタン・ゲッツの名前も挙げています。長いキャリアの中で、ジャズはソングライターや詩人としてのあなたにインスピレーションを与えましたか?

キャピトル・レコード時代の初期のマイルス(デイビス)かな。でも、ジャズとは何だろう。デキシーランド、ビバップ、フュージョン──。何をもってジャズと言うのか。ソニー・ロリンズか? ソニーのカリプソの曲は好きだが、あれはジャズだろうか。

ジョー・スタッフォード、ジョニ・ジェームス、ケイ・スター、みんなジャズシンガーだと思うが、私にとってのジャズシンガーは、キング・プレジャーだ。わからないな。ジャズのカテゴリーには何でも入れられる。ジャズの歴史は「狂騒の1920年代」にまでさかのぼる。ポール・ホワイトマンがキング・オブ・ジャズと呼ばれていた。でも、レスター・ヤングに聞いたら、「何を言ってるんだ」と思うだろうね。

ジャズが私にインスピレーションを与えたか。そうだね。多分、多くのインスピレーションを受けたと思う。シンガーではエラ・フィッツジェラルド。ピアノ弾きでは間違いなくオスカー・ピーターソン。ソングライターとしての私に影響を与えたのは? そう、(セロニアス)モンクの「ルディ・マイ・ディア」だ。あの曲で、ああいった何かをやろうという方向に向かったんだ。あの曲を何度も何度も聞いたことを覚えているよ。

──アドリブはあなたの曲ではどんな役割を果たしていますか?

何の役割もない。いったん曲をつくったら、その曲の性質を変えることなどできない。ギターやピアノのパターンを決まった構造のうえで変えたり、そこから出発して演奏したりはするけれど、それはアドリブではない。アドリブはよいパフォーマンスにも悪いパフォーマンスにもなるが、私は一貫していたい。何度も何度も、最も完璧な形で同じ演奏をするということだ。

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