香港ドルのペッグ崩壊に賭けたら勝てるのか 鉄壁のカレンシーボードをめぐる思惑が浮上

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
にらみ合うデモを行う香港市民と警察(写真:ロイター/Tyrone Siu)

「香港国家安全法」の成立によって、香港に「高度な自治」を認める「中国の一国二制度」が揺らいでおり、その市場への影響について問われることが多くなった。中国政府の香港への対応は米中対立を煽り、通貨「元」の売りが加速する一因にもなるため、為替市場の関心は元安ドル高の動きに偏りがちだ。だが、そのほかにも「香港ドルひいては香港の国際金融センターとしての地位は大丈夫なのか」という照会も受ける。

ブルームバーグは6月10日付で『カイル・バス氏、香港ドルのペッグ崩壊に賭けるファンド』と題し、香港ドルと米ドルのペッグが崩壊するシナリオに賭ける投資家の存在を報じていた。中国大陸と香港の間で勃発した騒動がそのまま香港を起点とする市場の動乱に至るというシナリオは、確かに警戒すべきリスクの1つなのかもしれない。

香港ドルのペッグ崩壊を懸念する動き

実際、5月28日に香港国家安全法が全国人民代表大会で承認されると、その前後で、ペッグ崩壊を懸念する思惑から香港ドルの対ドル1年物フォワードレートが変動域(7.75~7.85)の下限に迫る動きが見られた。

もちろん、その際、スポット相場に大きな動揺が走ったわけではなかった。また、その後は米中対立に主たる懸念が移ったことで元安ドル高が進み、中国大陸から香港への資本流入が増加したため、フォワードレートも落ち着きを見せている。

現状ではペッグ崩壊に賭けるゲームは鳴りを潜めているが、ファンダメンタルズから推測するのではなく、中国の態度次第でにわかに懸念が高まるのであれば、「今が盤石だから大丈夫」とは言い切れない。事実、一連の騒動を経てフォワードレートの水準は若干ではあるものの香港ドル安方向へシフトしたままだ。

ここで言う「ペッグ崩壊」とはいわゆる「一国二制度」の崩壊という政治イベントとおおむね同義と考えられる。というのも、カレンシーボード制における香港ドルの安定性は折り紙付きであり、経済・金融面からその崩壊可能性を論じるのは無理があるからだ。

次ページなぜ香港ドルの安定性は折り紙付きなのか
関連記事
トピックボードAD
マーケットの人気記事