地方の高校生も海外大へ、大学生らが挑む変革 留学支援は無料、イベントで魅力伝える

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都市部では海外大進学者を毎年出している高校もあるうえ、海外進学向けの予備校などもある。また身近に海外進学した高校の先輩がいれば、親や教師、友人からの協力も得やすい。だが、地方となるとサポート環境が充実しているとは言えない。

「地方の高校生を後押しできるようなきっかけを作りたい」(髙島さん)と、2019年は北海道や秋田、長野、徳島、島根、鹿児島、沖縄などでイベントや自己分析のワークショップを開いた。小林さんも「地方にいるだけで将来の選択肢が狭まるのは良くない。海外で花開く人は地方出身者の中にもいる」と地方の高校生の参加を呼びかける。

留学支援は原則無料

費用面でも特長がある。留学向け予備校などに出願サポートを頼めば、出願までに計100万円ほどの費用がかかる。だが、大学生らが手弁当で参加する留学フェローシップでは無料(ただし、宿泊を伴うキャンプ参加などの実費は必要)。団体の運営費はファーストリテイリングの柳井正会長兼社長が設立した柳井正財団や江副記念リクルート財団の寄付などでまかなっている。

全国の高校でイベントを開き、留学の魅力を伝えている(写真:留学フェローシップ)

留学フェローシップでは現在、50人ほどの現役学生が運営に携わっている。2014年の設立から徐々に参加者を増やし、今や世界の各大学の現役生と知り合うことができる。

「留学フェローシップの先輩にコーネル大の現役生を紹介してもらい、大学選びの際にとても助かった」(小林さん)。冨髙さんも「『留学フェローシップの先輩にお世話になった』という感謝の気持ちが現役大生の参加を促している。自らの受けた恩を返したい」と話し、海外大進学者独自のコミュニティーが育ちつつあるようだ。

留学フェローシップの活動は高校側にも評価されている。冒頭のイベントを開いた札幌新陽高校の細川凌平教諭は「グローバル化の影響を感じている生徒たちを見ていると、海外進学という選択は今後増える可能性がある。海外進学なんてありえない、と頭から否定するのではなく、選択肢と示してあげるだけでも、生徒にとってプラスになる」と言う。

髙島さんは留学フェローシップの活動について、「必ずしも海外の大学を勧めているわけではない。一番大切なのは主体的に進路を考えること。その中で、海外大への進学という道を選んでほしい。イベントに参加したことで、海外大進学ではなく日本の大学という道を選んだ高校生もいる。そもそも大学進学という道さえ自らにとって正しいかを考えてほしい」と話す。

現役大学生らが挑む教育の社会変革。その現場からは、多様化する若い世代の新しい生き方が見えてくる。

林 哲矢 東洋経済 記者

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はやし てつや / Tetsuya Hayashi

日本経済新聞の記者を経て、ハーバード大学(ケネディスクール)で修士号。『週刊東洋経済』副編集長の後、『米国会社四季報』編集長。

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