飲酒に厳しいイスラム教徒「消毒液」使用の是非 アルコール成分を禁じる動きも出てきている
酒を飲むか、飲まないかについては、同じイスラム教の国でも、国によって状況は異なる。飲酒が全面的に禁止されている国もあれば、そうでない国もある。
イスラム教徒をもてなすという観点からすれば、酒を出すかどうかはさほど大きな問題にはならない。豚肉の場合には、はっきりとわからず、それが紛れ込んでいる場合もあるが、酒だとそうはならないからだ。イスラム教徒以外の人間のなかにも、酒を飲まない人たちがいる。そうした人たちは、宴席ではソフトドリンクを飲む。
ところが、最近では、イスラム教の国、あるいは信者のなかに、飲酒だけではなく、アルコールを成分として含むものも禁じるという動きが生まれている。
アルコールの除菌を良しとしない人も
たとえば、アルコールによる除菌もまかりならぬとする人たちがいるのだ。飲食店だと、消毒にアルコールを使う。それがだめだというのである。これは、ハラール認証がはじまったことで生まれてきたもので、突き詰めていくと、いかなるアルコールの使用も排除されることになる。
そうしたことは『クルアーン』には書かれていない。ムハンマドの言行録である『ハディース』にも出てこない。ただ、『ハディース』においては、礼拝を行うときに、いかに浄(きよ)めるかということが事細かに書かれている。
だからこそ、東京ジャーミイには清め所があり、礼拝の前にはそこで手足と顔を浄めることになっている。浄める部分は異なるが、神社の手水舎(てみずしゃ)で浄めるのと意味は同じである。
『ハディース』の「浄めの書」では、冒頭に、これに関連する神のことば、「汝ら、礼拝のために立ち上がる場合は、先ず顔を洗い、次に両手を肘まで洗え。それから頭をこすり、両足をくるぶしまでこすれ」が載せられている(『ハディースⅠ イスラーム伝承集成』牧野信也訳、中公文庫)。
消毒にまでアルコールを用いてはならないということに関連して、次のような話が伝えられている。それは、「酒やその他アルコール飲料で浄めを行うことは許されない。アル・ハサンとアブ・ル・アーリヤはそのようなものを斥(しりぞ)ける。アターは、酒やミルクで浄めるより砂でこする方が好ましい、と言った」という話である。
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