飲酒に厳しいイスラム教徒「消毒液」使用の是非 アルコール成分を禁じる動きも出てきている

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イスラム教徒をもてなすというとき、豚肉を避けるのは当然必要なことだが、酒や料理に含まれる酒の成分ということになれば、かなり判断が難しい。酒をまったく料理に使わなければ、たしかに問題は生じないかもしれないが、そうなると、味に影響が出る。せっかくの料理が完璧なものではなくなってしまう恐れがある。

相手のイスラム教徒が、料理に酒を使うことを何とも思っていなければ、せっかくの配慮が無駄になり、無意味になってしまう。気にするかどうかを聞ける機会があれば、相手の考えを知っておいたほうがいい。

ただ、徹底的にハラールでない料理や食品を避けようとする人たちは、自分の国から食材を持参する。阿良田の文章が載った『食文化誌 ヴェスタ』のほかの記事では、そうした実例が紹介されていた。

それからすれば、食材を持参しない人たちは、料理にアルコールが使われているかどうかをそれほど気にしていないとも考えられる。

まずは相手の考えをしっかり理解すべき

料理にアルコールを使うことをタブーと考えるイスラム教徒もいる。それをあらかじめ頭に入れておき、後はその場その場で適切な対応をするしかないだろう。少なくとも、イスラム教徒のあいだで、一律に決まっているわけではないのだ。

仏教の基本的な戒に「五戒」というものがある。これは、出家した僧侶にも、在家の一般信者にも共通する戒であり、そのなかに、「不飲酒戒(ふおんじゅかい)」というものがある。酒を飲んではならないという戒めである。

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日本人の在家仏教徒のなかに、これを守っているという人はほとんどいないだろう。僧侶の場合、かえって酒を好むという人が多い。昔は、僧侶のあいだでは、「般若湯(はんにゃとう)」が酒の隠語として用いられた。歌舞伎や落語などには、この般若湯が登場する。

イスラム法を厳格に適用しようとしている国では、酒の販売が禁じられていたりするが、こっそりと手に入れ、それを飲んでいるイスラム教徒もいる。酒の誘惑はなかなかに断ち難いのである。

島田 裕巳 宗教学者、作家

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しまだ ひろみ / Hiromi Shimada

1953年東京都生まれ。東京女子大学と東京通信大学の非常勤講師。1976年東京大学文学部宗教学科卒業。1984年同大学大学院人文科学研究科博士課程修了。日本女子大学教授、東京大学先端科学技術研究センター特任研究員などを歴任。著書に『創価学会』(新潮新書)、『戦後日本の宗教史』(筑摩選書)などがある。

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