「貧乏子沢山」という言葉がありますが、あれはまったくの逆で、むしろ、世帯年収が低いほど子の数は少ないというのが事実です。2017年の就業構造基本調査から、夫婦と子世帯だけを抽出して「一人っ子世帯」と「2人以上の子を持つ世帯」の構成比を比較したのが以下のグラフです。
同じ「一人っ子」でも二極化
明らかに、低年収世帯に「一人っ子」は集中しています。世帯年収300万未満では7割を占めます。一人っ子世帯を、2人以上の子がいる世帯が上回るのは、世帯年収500万円以上です。
つまり、子どもを2人産み育てるためには500万円以上の世帯年収がないと厳しいということが読み取れますし、「3人産み育てる」のはそれ以上必要だということです。貧乏子沢山どころか裕福じゃないと子は産めないのです。
かといって、世帯年収が上がれば上がるほど子の数が比例して増えるかというと、そうでもなく、世帯年収1000万円あたりで頭打ちになり、世帯年収2000万円を超える富裕層になると、逆にまた「一人っ子」比率が増えてしまいます。言うなれば、同じ「一人っ子」でも、貧困層と富裕層に二極化しているのです。2番目の子を「経済的に産めない」前者と「選択的に産まない」後者とでは、子どもの置かれた環境は大きく変わるでしょう。
家庭の経済環境は、子の進学や就職に大きな影響を及ぼします。学力があっても、学費がないことで進学を断念し、高卒で就職をせざるをえない子も少なくありません。その逆に、親の信用や経済力で幼稚園からエスカレーター式に大学まで直行できる子もいます。
残念ながら、令和の現代でも、学歴はその後の生涯賃金に大きく反映します。厚労省の「2019年賃金統計調査」によれば、退職金を含まない正社員の生涯賃金は、大卒で大企業に就職した場合は3億1000万円ですが、高卒で中小企業に就職した場合は1億8000万円弱です。その差は、1億3000万円も違います。
親から受け継ぐのは、生物学的な遺伝子だけではありません。親の経済力もまた遺伝します。親の経済環境が、そのまま子どもの未来の経済状況を決定づけてしまう場合もあるからです。もちろん、親によって子の未来がすべて宿命づけられているとまでは言いませんし、子は子の人生を自分で切り開いていくことも可能ですが。
つまり、「一人っ子だから」という兄弟姉妹構成に、結婚や恋愛ができない直接的な要因があるわけではなく、とくに、結婚に際して自身の経済力を問われる男性にとって、「豊かな一人っ子」と「貧しい一人っ子」との間の明暗をくっきり分けてしまうのです。
経済的不安もなく自由に恋愛を楽しむ前者と、なかなか収入が上がらず、日々の生活に精いっぱいで、結婚どころか恋愛すらままならない後者との格差。これは、そのまま未婚化・少子化へとつながっていく問題でもあります。
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