自助グループとは、同じ問題を抱えている人たちが集まって分かち合い、プログラムによって依存しない新しい生き方を獲得していく場だ。当事者の自助グループは「GA(ギャンブラーズ・アノニマス)」、家族の自助グループは「ギャマノン(GAM-ANON)」、NPO法人全国ギャンブル依存症家族の会がある。いずれもホームページで簡単に検索でき、直接、会場に足を運べば参加できる。
実際、田中さんは自助グループに関わることで、依存症から回復できたという。
「行けと言われて仕方なく出かけた自助グループでしたが、思いのほか居心地がよかった。ギャンブル場以外に自分の居場所ができたんです。また、そこでロールモデルとなる回復者に出会えたことも大きかった。どん底にいた私にとって彼女はとてもキラキラしていて、あんなふうに輝きたいって思ったんです」
さらに回復した後に自助グループと関わり続けることは、自身のためにもなると話す。
「依存症だったという暗い過去は消せませんが、その過去から学んだことを、今苦しんでいる人たちのために役立てることができれば、過去にも価値ができます。逆にそういう役割を与えられることで、再発を防いでいるという側面もあります」
認知行動療法こそが根拠が示されている唯一手段
こうした自助グループとともに回復のための柱となっているのが、精神科病院やメンタルクリニックなどで行われている専門的な治療だ。ギャンブル依存症の治療に関しては、現在、治療薬はなく、「認知行動療法が唯一、エビデンス(科学的根拠)が示されている有効な手段です」と原田さん。
「認知行動療法とは、パチンコ店の前を通らないなど、ギャンブルをしたくなる衝動のスイッチを押さないための行動変容や、ギャンブルに変わるストレス解消法の獲得など、依存症を治すためのスキルを身に付けていく治療法です。行動が変わることで、ギャンブルに対する考え方(認知)も変わってきます」
欧米ほどではないが、日本でもギャンブル依存症対策は少しずつ前進していると原田さん。一方で、今回のコロナ禍のパチンコの報道で危惧していることがある。社会がギャンブル依存症の人を追い詰め、援助を求められない状態にならないか、だ。
「社会から排除されてしまうことで、ギャンブル依存症の人がますます孤立しないか、支援につながらなくなってしまうのではないかと、心配しています」
最後に田中さんが言う。
「報道の人にはぜひお願いしたい。パチンコ店に行く人たちを映すだけでなく、それで困っている人はどこにどう相談すればいいか、そうした有益な情報も流してほしい」
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