五木寛之「コロナ後は三散の時代がやってくる」 再び注目「大河の一滴」著者が語る今後の生き方

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つまりポストコロナになると、追い出す圧力も高まるし、逃げ出したいと思う人々も増えていく。だから、移民・難民問題は、逃散と同時に、分散・拡散しながら、これまで以上に地球全体に広がっていくように思います。

人間は慣れる生き物

――『大河の一滴』では、応仁の乱前夜の状況が次のように描かれています。「当時、社会を襲った寛正の大飢饉は京都だけで8万人以上の餓死者を出したといわれています。震災があり、台風もやってきて、伝染病や疫病が大流行した。土一揆という内乱があちこちで起きはじめ、大名や戦国武士たちが絶えず内乱をくり返していた政情不安な時代でした」。震災、台風、伝染病や疫病と、現代日本の状況と重なりすぎてびっくりしました。

その後に起こった応仁の乱や戦国時代の天下大乱は、新しい時代へのアプローチでもありました。中世ヨーロッパでは、ペストがルネッサンスを準備したというのはよく言われる話です。おそらく今度のコロナウイルスも、大きく時代を動かすことになるでしょう。

分散・拡散・逃散という「三散」は、これまでも少しずつ問題になってきていたものです。今まで、変わろう変わろうとしていて、なかなかふんぎれなかったもの、膨張していて崩れる寸前になっていたけれど、かろうじて維持していたものもたくさんあります。

『大河の一滴』(書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします)

でも、コロナによって対症療法ではどうにもならなくなってしまった。コロナを契機に、それらが一斉に雪崩をうって崩れています。

――私たちは、そこまで急激な変化を受け入れることができるんでしょうか。

人間は慣れるからね。イタリアでコロナがあれだけ拡大したのは、四六時中ハグしたり、ほっぺに3回キスしたり、身体的な接触の多いあいさつをしていたことも大きいという。でも今は肘でタッチしているし、それに慣れていくんですね。

コロナによって起こる変化は、劇的なものだけじゃないんですよ。むしろ、日常生活の中のあいさつや名刺交換、握手といった小さな習慣の変化が繰り返されて気づいたときに大きく変わっている。そういったことまで含めて、コロナの後遺症は、50年、100年という単位で続いていくと思います。

(後編に続く、6月24日公開予定)

斎藤 哲也 ライター・編集者

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さいとう てつや / Tetsuya Saito

1971年生まれ。東京大学文学部哲学科卒業。ベストセラーとなった『哲学用語図鑑』など人文思想系から経済・ビジネスまで、幅広い分野の書籍の編集・構成を手がける。著書に『試験に出る哲学 「センター試験」で西洋思想に入門する』がある。TBSラジオ「文化系トークラジオLIFE」サブパーソナリティも務めている。

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