五木寛之「コロナ後は三散の時代がやってくる」 再び注目「大河の一滴」著者が語る今後の生き方

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それが今は、開いている本屋さんでも夜の6時か7時にしまってしまう。深夜営業の店もほとんどやってない。みんな自粛しているから、誰も出歩いたりしない。下手にほっつき歩くと、不審尋問を受けそうな雰囲気さえあります(笑)。ですから出たくても出られず、不要不急の夜遊びができなくなった。それで朝型に変わってしまった。

コロナの影響で、大勢の人がライフスタイルの変更を余儀なくされています。それが人間の内面に与えるインパクトを考えると、今回のパンデミックは、明治以来の近代日本の歴史の中でも、ものすごく大きな出来事になるだろうと、つくづく思うようになりました。

明治以来、日本でも天然痘やコレラなど、さまざまな感染症がくり返し発生しました。しかし今度のコロナは、スペイン風邪に比べるとはるかにその被害は少ないにもかかわらず、社会全体が受けたショックは計り知れないものがあると思います。

至るところで「分散」が加速する

――コロナの影響は長引くとお考えですか?

ずいぶん早くからポストコロナとか、先走って論じている人もいるけれど、そう簡単には終わらないと思います。14世紀後期のペストも、20世紀のスペイン風邪も、第2波、第3波がやってきて猛威を振るった。それを考えると、今回のコロナも1度で終わるとは思えません。

「『3密』回避の時代の後にやって来るのは『三散』だと僕は考えています」と言う五木さん(撮影:岡本大輔)

だけど、コロナを克服した後、世界は大きく変わっていくことは間違いない。今、「3密」と言われていますね。「密集」「密閉」「密接」。本来の「三密」は仏教用語ですが、この「3密」回避の時代の後にやって来るのは「三散(さんさん)」だと僕は考えています。まあ、冗談ですけど。

1つ目の「散」は「分散」です。今後、ありとあらゆる形で、一極集中から分散していく傾向が強まっていくと思います。例えば、中央政府が緊急事態宣言を出しても、全国一斉に動くのではなく、各都道府県の知事がそれぞれ独自の緊急体制を指揮する姿が目立ちました。これは権力の「分散」と言えます。

企業も、これまでは大企業が統合する傾向にありましたが、これからは小さなセクションに分かれていくんじゃないでしょうか。サプライチェーンも分散する。1カ所に密集せず、小さなセクションに分散してその集合体となっていく。そもそもテレワークが分散そのものです。第2波、第3波への備えもありますから、国家も企業もこれからグローバル化の反対へ動くんじゃないか。

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