渋谷で物件価格2000万円台「目利きのお家」事情 「購入は時代より自分のタイミングが大切」

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そこで伊勢谷さんに、1人の中古物件売買のプロフェッショナルとして、また築古不動産購入の経験者として、重視している3カ条を聞いた。

1.  自分自身の今現在のニーズを見極める
ライフスタイルや人間関係と、住む街は密接な関係がある。今自分がどんな暮らしを望んでいるかを掘り下げることが大切だ。他人の評価や将来の可能性を考慮しすぎた選択は、後悔のもとになりかねない。今のライフスタイルにフォーカスし、それが変わったら売るという気概で物件を見極めると、売却時にもセールスポイントのある良物件に出合える。
2. 街と物件の属性の不一致を避ける
洗練されていたり、親しみやすかったり、単身者が多かったり、ファミリーが多かったりと、それぞれの街には固有のカラーや住人の傾向がある。自分と似通った属性を持つ街に住むほうが生活者としてなじめるし、住人同士の豊かな人間関係も期待できる。また将来の売却を考えたときも、例えば単身者が多い街ならワンルーム、住宅街ならファミリータイプと、街と部屋の属性が一致していたほうが売りやすい。
3. 部屋の内装よりも建物そのものを見る
リノベーションが前提であれば、部屋の内装はどうとでもなると考えて、建物の立地や窓からの眺望、そしてマンションの管理体制を重視して選ぶ。なかでも最重要なのは立地で、今後立地によるマンションの資産価値の差がさらに大きくなっていくと考えられる。耐震基準やマンションの管理体制については、しっかりと確認ができる仲介会社を選ぶこと。

新時代の不動産ニーズはどうなる?

新型コロナウイルスの影響によって、住宅分野の不動産ニーズはどう変わるか? 新型コロナの影響がどれほどの期間や規模になるのか未知なだけに、今の段階ではなんとも言えないが、価格も購入層も変わってゆくのは間違いない。伊勢谷さんは今の状況をどう見ているだろうか。

「多拠点居住など新しい住まい方がはやってきている一方、今回の件で自分の居場所をきちんと整えようと思われる方も多いはずです。人々の価値観が多様化するなか、住まいに関しても “一点もの” 感が強い中古住宅や、自分らしい暮らしが反映できるリノベーションという手法は、まだまだ普及していくのではないかと思います」(伊勢谷さん)

住む人の個性が反映された”一点もの”の住まいを求める人が増えている(撮影:尾形文繁)

何日も自宅にこもる経験によって、長時間の居心地のよさや在宅ワークのしやすさなどを重視する人が増えた。一方であまりにも唐突に訪れた大きな社会変化に、先行きに対する不安感も高まっている。

今後はよりライフスタイルにフィットする住まいを、無理のない範囲で整えたいというニーズが強まるのではないだろうか。

伊勢谷さんが指摘するとおり、優良中古の購入は、その1つの選択肢になるかもしれない。ただし前述したように、中古住宅購入は難しい。個々の多様なニーズに真摯に寄り添う、知識豊富なプロフェッショナルと、中古住宅を正しく評価する仕組みが、今後はより切実に求められていくだろう。

蜂谷 智子 ライター・編集者

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はちや ともこ / Tomoko Hachiya

東京都出身。上智大学大学院文学研究科博士前期課程修了。語学教材の専門出版社を経て2014年よりフリーランスのライター・編集者として活動。住宅・教育分野の執筆多数。1児の母。Facebookはこちら

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