渋谷で物件価格2000万円台「目利きのお家」事情 「購入は時代より自分のタイミングが大切」

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しかし伊勢谷さん個人は、購入する際に時代性よりも大切なものがあるという。

「今の家を購入した2017年当時、都内の不動産価格は高止まりしていました。購入に最良の時期ではなかったかもしれませんが、後悔はしていません。いい物件は、いつの時代でもいいものですし、不動産を手にするにあたっては、時代よりも自分自身のタイミングが大切だと考えています。

私がこの物件を購入したのは、現在携わっているサービスを立ち上げ、がむしゃらに働いていた時期でもありました。私個人も人生に対して攻めの気持ちを持ちたかったのです。だから、渋谷。そこで買える理想の家……と逆算して今の選択があります。月々支払っている金額は、住宅ローンに管理費修繕積立金などの諸経費を合わせても8万円台。その価格で賃貸を選んだら、渋谷では極狭の部屋になると思いますよ(笑)」(伊勢谷さん)

借地を不安に思う人も多い

確かに渋谷で月々8万円台という価格は破格だ。とはいえ、賃貸と違って住宅ローンは長きにわたって支払う必要がある。加えて借地ということは、土地は自分のものにならないということ。長く支払っても自分のものにならないのであれば、不動産を購入するうまみは少なくなってしまうと思うが……。

ワンルームで部屋を広く使いつつ、アイアンの間仕切りで緩やかにゾーニング。在宅ワークはダイニングと兼用の大きなテーブルで行う(撮影:尾形文繁)

「借地を不安に思う人は多いのですが、実は借地借家法に基づく借地権にもいろいろあります。借地借家法の“旧法”に準拠している物件であれば、借主の権利が強く、ほとんどの場合は契約更新によって半永久的に土地を借りることが可能です。借地には地代がかかりますが、私の場合は数千円。それなら負担ではないでしょう?」(伊勢谷)

借地といっても、さまざまなケースがあるのだ。不動産は個別取引であり、1つの事例をすべてに当てはめることはできないし、逆に一般的な定石があっても、それが当てはまらない物件もある。新築以上と評価されるビンテージマンションがある一方、古かろう悪かろうの物件も多数存在する世界だ。だからこそ目利きが得をするし、だまされる素人も出てくる。この難しさが築古物件購入時のハードルの高さにつながっている。

「不動産を手にするにあたっては、時代よりも自分自身のタイミングが大切だと考えています」と話す伊勢谷氏(撮影:尾形文繁)

不動産経済研究所と東日本レインズのデータによれば、首都圏のマンションにおける住宅流通に占める中古取引の割合は、2016年から4年連続で中古が新築を上回っている。

とはいえ国際比較で見れば、日本の中古住宅流通のシェアは低い。2018年の全住宅流通量に占める日本の既存住宅(中古住宅)流通シェアが14.5%であるのに対して、イギリスやアメリカでは80%以上である。

空き家問題解決のためにも、日本の中古住宅の流通や活用を促進すべきだが、中古住宅のメリットとリスクを的確に評価する仕組みやカルチャーが根付いていないことが、課題となっている。

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