渋谷で物件価格2000万円台「目利きのお家」事情 「購入は時代より自分のタイミングが大切」

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「まず耐震補強工事が完了済みであることを確認し、次に借地権の詳細を調べ、総合的に考えて、費用に対する資産価値は高いと判断しました。借地権付きマンションは、確かに所有権付きに比べると売却は難しいですが、渋谷の中心という立地は特別ですから、売ることも貸すこともできると思います。実際にこのマンションは賃貸入居率が高く、そこも将来の運用を考えたときにプラスとなる要素でしたね。

とはいえこれは、不動産メディアの編集長として多くの物件を見て、不動産エージェントとして多くの物件を売ってきたからこそできる、玄人的選択かもしれません」(伊勢谷さん)

震災直後に購入した、築古マンションの価値が高騰

“玄人的”な物件の購入に踏み出したのは、仕事上の経験だけでなく、今までの個人的な不動産売買の成功体験も背景にある。35歳という若さにして、今の部屋を購入するまでに2戸の持ち家(マンション)に移り住み、売却で利益を出した。

伊勢谷亜耶子さん。中古不動産の紹介メディア『cowcamo(カウカモ)』編集長(撮影:尾形文繁)

「特に1つ前に住んでいた吉祥寺のマンションは、購入時から値上がりしましたね。購入したのが東日本大震災後の2012年。当時は誰もが耐震基準に敏感だったので、築50年程の築古の物件は全体的に人気がなかった。だから人気の吉祥寺で、井の頭公園に隣接している好立地でも、お買い得だったんです。

私自身は購入時に不安はまったくなかったです。マンションが耐震診断を行っていたときの資料で、手計算で綿密に耐震強度を計算してあったデータに目を通しました。その結果『これなら大丈夫』と判断し購入。

今ではビンテージマンションとしてブランド価値のある物件になっています。購入時に施したリノベーションも好評で、それが売値にも反映されました。結果的に手元にお金も残り、それがこの部屋を買うための資金になりました」(伊勢谷さん)

実は伊勢谷さんは慶應大学環境情報学部で、建築について学んでいる。建物の構造について理解があることも、購入に踏み切れた理由だろう。震災後は誰もが耐震基準に対して過敏になっており、良物件でも築古というだけで敬遠されていた。人々の購入熱が下がり、値がこなれたときこそ購入のチャンスになる。27歳にして、伊勢谷さんは先を見越した不動産購入をしたわけだ。

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