「パクりまくる中国」に日本が勝てない深い事情 マネの放棄は「学びの放棄」と同意義である
2013年、ワン氏が新たに目をつけたのが、中国で急成長をはじめたフードデリバリーである。これは、もともと餓了么(ウーラマ)が開拓した市場だった。2008年に創業された学生ベンチャーのウーラマは、大学内ではじめたフードデリバリーを学外へ広げ、12都市でサービスを展開していっていた。
この12都市は、もともと屋台・外食文化が強い地域だった。屋台・外食サービスを利用する文化が強い地域には、「レストランの食事を手軽に食べたい」というニーズを持った消費者がすでに存在しており、サービスが受け入れられやすいと考えたのだ。
これに対し、美団のワン氏は「フードデリバリーは屋台・外食文化のうすい地域でも新規顧客を開拓していけるはず」と考えた。ある程度の消費力さえあれば、フードデリバリーの習慣は新たに広められると予測し、ウーラマをコピーした「美団外売」を30都市で一斉に展開した。
加えて、より効果的に集客するために、中国最大のクチコミサイト「大衆点評(ダージョン・ディアンピン)」と手を組むことにした。外食する際、中国の多くの消費者は、大衆点評のサイトをチェックし、店選びをする。日本で言えば、食べログのようなサービスだ。だから、ワン氏はその大衆点評のアプリにデリバリー機能を新たに搭載させれば、すべての消費者にデリバリーサービスを効率的に提案できると考えた。
「パクる」ことこそビジネスの王道
2015年、美団と点評が合併して誕生した美団点評は、ウーラマ不在の18都市でシェアを独占し、残りの12都市でも競争を繰り広げて、フードデリバリー市場のトップの座を奪うことに成功した。2018年時点でユーザー数は6億人を超え、1年間の総取引回数は約64億回、日平均では1750万回で、世界最大規模のサービスとなっている。
その後、美団点評のアプリは、フードデリバリーに加えて、映画・演劇、カラオケ、ホテル・民泊、食品スーパー、美容院、配車、旅行など、ありとあらゆるジャンルの「いいとこどり」をした、オールインワンのサービスとなって、さらに人気を集めている。
こうしたワン氏の戦略は、コピー大国・中国でさえ「パクリすぎ」と非難されてきた。しかし、ワン氏は「本家のモデルを完全にコピーしたうえで、本家よりも充実したサービスにすることができれば、それが王道だ」と語り、その言葉を実現し続けている。
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