コロナで判明「つらくない職場」の決定的な要因 あなたの職場に「心理的安全性」はありますか

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チームにコンパッションがあると、部下が主体性を発揮して生き生きと活躍を始めます。

ジャッジをせずに最後まで話を聴く

心理的安全性をアップさせるため最適な取り組みのひとつに、先述した「マインドフル・リスニング」があります。

マインドフル・リスニングでは、基本のマインドフルネス瞑想と同じように、相手の話に注意を向けて聴きます。その間、自分の意見は差し挟みません。ただ黙って、相手の言うことに耳を傾け続けます。

実際にやってみると、これがなかなか難しいのです。なぜなら、私たちは無意識のうちにあらゆることに対してジャッジ(評価・判断)するのが癖になっているからです。

とくに忙しいリーダー、中でも経営者や役員などは「意見を求められる側」であることがほとんどなので、評価をせずに他者の話を聴くということがなかなかできません。「その件はこうすればいいだろう」「なぜこうしないんだ」など、「こんな成果を出してほしい」「相手にこうあってほしい」という自分の意図や予測を手放すことが難しいからです。そのため、相手の話を最後まで聴かずに、途中で遮って自分から話し出すことが多くなります。「強い発信力」=「コミュニケーションがうまい」と思い込んでいるリーダーも少なくありません。

しかし、このマインドフル・リスニングを体験すると、「批判も判断もなく、ただ人に話を聴いてもらえるということは、こんなにもうれしいことなのか」と身をもって感じることができます。実際、このワークを体験して、泣き出した課長さんもいたほどです。この喜びを体感した人は、「聴く姿勢」を重要視するようになります。こうした過程を経て、コミュニケーションの質が変わっていくのです。

マインドフル・リスニングのワークで聴く姿勢を身に付け、ミーティング中の会話そのものもマインドフルに行うことで、意見交換を上辺だけのものではない、その人の内面に根差した意義深いものに変えていくことができます。

また、マインドフル・リスニングは、営業テクニックとしても使えます。あるリーダーによると、PCを使うのは本当に必要なときだけにして、「今、お客様が何を思われているんだろう」というところを見ながらアプローチしたら、商談の質がグッと改善して、成果もすごく上がるようになったといいます。

『マインドフルネスが最高の人材とチームをつくる―脳科学×導入企業のデータが証明!』(かんき出版)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします。紙版はこちら、電子版はこちら

マインドフル・リスニングのワークの詳細は長くなるのでここでは割愛しますが、私の著書などでも詳しく述べていますので、興味がある方はそちらもご参考になさってください。

マインドフルネスの効果を感じられるようになるまでには個人差がありますが、8週間程度の継続で変化を感じられることが、多くの科学的調査から明らかになっていますので、焦らず、じっくりと習慣化していくことをお勧めします。

マインドフルネスは、ビジネスシーンだけでなくもちろんプライベートにもさまざまなよい効果をもたらします。特別な道具も必要なく、体ひとつで1人でも複数人でもはじめられるこのメンタル・トレーニングを、ぜひ皆さんも取り入れてみてください。

荻野 淳也 マインドフルリーダーシップインスティテュート(MiLI)代表理事、合同会社Wisdom2.0Japan代表社員

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おぎの じゅんや / Junya Ogino

慶應義塾大学卒。外資系コンサルティング会社やスタートアップ企業のIPO担当やヨガスタジオ運営企業の取締役を経て、2008年起業。2013年からはマインドフルネスを日本の社会、組織のOSとするべくMiLIを設立し、日本の大手企業やリーダーにマインドフルネスベースのリーダーシップや組織開発のプログラムを提供している。2006年から日本におけるマインドフルネスの社会実装を志し、活動している。Googleで開発されたSearch Inside Yourselfの認定講師。

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