「批判と中傷」区別つかない人がカモにされる訳 煽動する人は言いくるめたほうが得だから言う

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しかし、いまは違います。TwitterでもYouTubeでも誰でも声を上げられます。それはもちろん大きなメリットを生み出す一方で、「間違った声」を増幅させてしまう危険とも表裏一体です。そのうえ、それらの「間違った声」は目立ちやすく、目立つものは増幅する可能性が高い。

増幅し、間違ったものが伝播する。ネコを見ていた人たちも「確かにあれは、見ようによってはねずみでもおかしくないか」といった具合に伝播する可能性が増えてくるのです。

そこに着目するのが悪い人間です。彼らはネコをネコだとわかっているにもかかわらず「ねずみがネコだっておかしくないじゃないか」と言うことによって、判断能力の低い人や何かに悩んでいる人たちを煽動していく。みんながそう言っているからそう言っておけば儲かるという理屈で、煽動する人間が現れているのが現代の特徴の1つです。

起業塾に通った全員が起業できるわけがない

よく「月額○○円で誰でも簡単に起業できる!」とうたう起業塾とか、最近だとオンラインサロンなどもよく見かけます。あえて極端に言いますが、当然、全員が全員起業なんてできません。月1万円とか年間いくらとかの起業塾にお金を払ったところで起業なんてできない。それに踊らされてしまうのは、ねずみをネコだと思ってしまうような人間が多いうえに、「起業できるよ」と言ったほうが得な煽動する側がそう言っているにすぎないのです。

そして、煽動する人間は「批判には耳を傾けるな」と言って、ネコをねずみだと言いくるめたほうが得をします。

周りを見てください。そういった本がたくさん並んではいませんか。有り金全部使えと言われて使い、その金はどこに行くのか考えてみましょう。それを言う人間たちのところに行くのです。そういう本がたくさんありませんか。それはポジショントークではないでしょうか。

そういった気持ちがよくなる情報に踊らされないようにするためには、つねに批判的な視点を持っておくことが大切です。

そういうなかにあって「やはりネコはネコである。魚類ではなく哺乳類である」というごく当たり前のことを言うほうが、逆に価値を持つようになってきています。

本来、物事というのは、そこからしか始まりません。ネコはネコであり、ネコは哺乳類です。ネコがかわいいかかわいくないかは、また別の問題で、それには議論の余地がありますが、ネコはネコであってねずみはねずみという事実は、何があっても変わりません。いま起業できない人間が起業塾に通ったところで起業できるようにはならないのと同じです。

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