今年は「六月病」「七月病」の流行に要注意だ 在宅勤務から通常出勤に戻ると何が起こる?

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では、どのような症状がみられると適応障害の可能性が高いのでしょうか? これは精神面と行動面の2つに分けることができます。

精神面では無気力感、不安、焦り、緊張が主となります。何をしても興味が湧かずに楽しめず、むなしい気持ちになってしまい、ネガティブな方向に物事を考えてしまいます。不安や焦りから、ささいなことでイライラしてしまう方もいます。

行動面では外出や身支度がおっくうになり、ひどい場合は無断欠席を繰り返すまでになります。人によっては暴飲暴食、無謀な運転といった攻撃的な行動が表れます。

適応障害の治療

適応障害は、うつ病のように抗うつ薬のような薬物によって治療することは難しいとされていますが(強い不安に対して一時的に抗不安薬を使う、といったことはあります)、明確なストレスが原因であるため、それを取り除くことが治療になります。

うつ病では慢性的なストレスの積み重ねのために、ストレス要因から離れてもすぐに症状が治まることはありませんが、適応障害では「ストレス要因から離れると、症状がよくなる」のです。

そのため、まず自分にとって何がストレスなのかを見つけるところから始めましょう。

今回の例でいうなら、在宅勤務と出社での勤務は、業務内容は同じでもそれを取り巻く環境のストレスは大きく違います。身支度のための早起き、満員電車による通勤、後輩への直接指導、上司との顔合わせ、面と向かってのクレーム対応、頻繁な飲み会など、挙げればキリがありませんね。

こうした環境を変えること自体は難しくても、自分の受け止め方を少し変えるだけで「ストレスから離れる」ことができます。例えば後輩への指導では「どうしてこんなこともできないのか!」と怒るばかりでなく、「今年は4月に十分な研修を受けられていないから仕方ない、後輩も業務がうまくいかないストレスでつらいと思うし、まずは基本的なことからもう一度教えてみよう」と捉えることで、自身の心にも余裕が生まれます。

ストレス自体を消すのではなく、自分がそのストレスに対してどうしたらうまく受け止められるかを探すことが大切です。

また、上司への対応や、取引先のクレーム対応といった人間関係の問題については、1人で抱え込まず周囲の人に相談することも重要です。とくに今年はイレギュラー続きですので、誰もが少なからず対人関係の悩みを抱えています。普段から、ちょっとしたことでも同僚や上司とコミュニケーションをとることで、相談しやすい空気をお互いに作ることが適応障害の悪化を防ぐことにつながります。

それでもストレスを受け止めきれず、つらさがひどいときには産業医に相談するなどして、時短勤務にすることや、少し休養をとることもよいでしょう。

ただしつらさがある程度落ち着いたら、社会復帰のために再発防止策を考えていくことも忘れてはいけません。少しずつでもよいですので、ストレスの受け止め方を身に付けていきましょう。

環境が変わると誰もがストレスを感じるものです。情勢がめまぐるしく変わる昨今ですが、ストレスとの付き合い方を身に付けられるいい機会と捉え、ポジティブな毎日を送っていきましょう。

上原 桃子 医師・産業医

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うえはら ももこ / Momoko Uehara

横浜市立大学卒。一般社団法人日本メンタルアップ支援機構理事。身体とこころの健康、未病の活動に尽力し、健康経営に関する医療系書籍の編集にも関わっている。医師と患者のコミュニケーションを医療関係者、患者双方の視点から見つめ直すことを課題とし、とくに働く女性のライフスタイルについて提案・貢献することを目指している。

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