ここからスタートした婚活だったが、“子どもを授かりたい”という気持ちからか、35歳までの、見た目がタイプの美人ばかりに申し込みをかけていた。これは、婚活を始めたばかりの男性にありがちなことなのだが、“なるべく若い女性” “なるべく見た目のいい人”と願う。しかし、こうした考えが念頭にある男性たちの婚活は、まずうまくいかない。
女性も然りで、“なるべく年齢が近い人”“できれば年下”“年収は自分よりもいい人”と言う。こうした理想を掲げていると、何年も婚活市場をさまよい続けることになる。
祐一も最初の半年は、苦戦をしいられた。身長180センチ、スリムな体型で、見た目もなかなかのハンサムだったので、お見合いは組めるのだが、自分がいいと思った女性には決まって振られてしまう。その繰り返しだったが、あるとき、36歳、38歳、41歳の3人の女性たちと仮交際に入ることができた。36歳はかわいいタイプ、38歳は美人タイプ、41歳は地味なタイプ。
3人と仮交際をしていたのだが、彼が真剣交際の相手に選んだ相手は、41歳の幸枝(仮名)だった。詳しい経緯は過去記事を読んでいただくとして、なぜ彼女だったかといえば、3人の中でいちばん祐一に思いやりと優しさを持って接してくれていたからだ。その数カ月後にはプロポーズをし、成婚退会する運びとなった。
彼は、成婚退会をするときにこう言っていた。
「自分の珍しい名字を残したい気持ちはあるんです。でも彼女は41歳だし、もしかしたら子どもは授からないかもしれない。でもいいかなって思っています。彼女と一緒に歩いていく人生が楽しければ、それで」
こうして結婚した2人だったが、“できることなら最後のチャンスに子どもを授かりたい”という思いは一致していたので、背水の陣で子作りに臨んだ。
助成金の出るラスト1年、不妊治療にチャレンジ
祐一は成婚退会をしてからも、たまに近況をLINEで報告してきてくれたのだが、1年経ったあるとき、こんなメッセージとともに1枚の写真が送られて来た。
「1年前の今日14時に、この〇〇ホテルのラウンジで、初めて幸枝とお見合いをしたんです。今日は出会ってから1周年記念日なので、家を別々に出て、ここで待ち合わせをしました。初心を忘れずにこれからも仲良くやっていきます」
それは、コーヒーカップの置かれたテーブルを挟み2人が微笑むショットだった。仲睦まじくやっている様子が伝わってきた。そこから数日後、またLINEが来た。
「子作りも自然に任せて1年が経ってしまいました。幸枝も42歳になりもう時間もなくなってきている。助成金が出るうちに、不妊治療に切り替えることにしました」
現在、厚生労働省は不妊治療の助成金を出す女性の年齢を43歳未満と定めている。42歳の幸枝には1年弱の時間しか残されていなかったが、そこに夫婦で懸けることにしたようだ。
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