部下が自発的に動き出す、管理職の5つの心得

必要なのは「威厳」ではなく魅力的なビジョン

このように、簡単に描けてしまうビジョンですが、そのビジョンには2つの条件があります。

① みんなの求めるビジョンであること。
② 自分個人のためのビジョンではないこと。

ビジョンを描くこと自体は誰でもできるのですが、ビジョンを書き出してみると、意外と自分本位のビジョンになっていることが多いのです。自分の目標を達成したい、自分(だけ)が実現したい未来を追いかけているというのはよくあることです。

例えば、あなたが部門の売り上げを1.5倍にしたいと考えていたとします。それは、誰のためでしょうか? 本当は、あなたの部門の商品を購入する「顧客のため」や、一緒に取り組む「仲間のため」だったとしても、それを皆に伝えず単純に「売り上げを1.5倍にした未来を共有」しただけなら、それは「みんなの求めるビジョン」にはなりません。

それどころか「◯◯さんは、自分が出世したいからあのビジョンを掲げたんだ」と陰口を叩かれかねません。

ビジョンを描いた後、それが「みんなの求めるものなんだ」ということをはっきりと伝える必要があります。

そこで、BAF法が役に立ちます。
① B:ビフォー
② A:アフター
③ F:フューチャー

この順番でビジョンを伝えると、うまくいきます。

① B:ビフォー

ビフォーとは、自分のつらい過去や苦い思い出を指します。今目指したいと思っているビジョンは、自分のつらい過去、苦しい思い出がきっかけになっていないでしょうか? 過去のネガティブな経験がベースにあると、ビジョンへの共感度は非常にあがります。

② A:アフター

アフターは、現在の思いです。過去のつらい思いをほかの人に味わってほしくない、その気持ちが、これから向かうビジョンの原動力になっていることを伝えます。

③ F:フューチャー

その結果、どんな未来をつくりたいのかを伝えます。多くの場合、このフューチャーだけをビジョンだと思いがちなのですが、ビフォー、アフターを踏まえてフューチャーを語ることで、ビジョンの説得力とその背景にある想いに共感してもらうことができます。

BAF法を使うと、みんなの求めるビジョンに変換できる

例えば、「出世したい」という個人的なビジョンもBAF法を使うとみんなの求めるビジョンに転換することができます。

B:出世していなかったことによってつらかった過去
・自分の無力さが原因で大きなミスを犯した。部下が辞めた。会社に迷惑をかけた。
・もしももっと自分に力があったら、あの問題を解決できた。
・自分は上にいかなきゃいけないと思った。
・会社の上層部に入って力をつけ、多くの人の役に立つ自分になりたいと思った。
A:過去のつらい思い出をほかの人に味わってほしくない現在の思い
・今、こうして部下ができて、以前よりは力を持てた。
・でも、まだまだだと思っている。もっと多くの人の力になりたい。
F:つくりたい未来
・会社の上層部にあがることで、会社の大きな問題を解決したい。
・もっと社会に対してインパクトを与えられる存在になりたい。

いかがでしょうか? 個人的なビジョンが、みんなの求めるものに変換できてしまいました。

ビジョンを描くことに対して、難しく考えすぎる必要はありません。やりたいことを書き出し、自分のビジョンに近い組織を見つけて共有し、語る際は「BAF法」でプレゼン設計をすれば、みんなの求める魅力的なビジョンを描くことができるのです。

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