ヤメ外資ITのタクシー運転手が弁護士志す人生 流転タクシー第3回、収入大幅減でも前を向く

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弁護士を目指すというのも、ある種突発的なものだった。行動には一貫性がないようにも感じるが、理由をこう話す。

「他の人から見れば、あちこちと移り気に思われるでしょう。ただ、私の根底には強い学歴コンプレックスがあります。高卒だったことで、所得は高くても正社員になれなかった。それでも、外資系大手で正社員のマネージャーとして評価されたことで世間の評価を克服できた。

弁護士を志したのも、合格して見返してやりたいという部分があるんでしょうね。司法試験も制度が代わり、最近では合格率も上がっている。決して届かない目標ではない。今は仕事の合間や休日に勉強し、最短での合格を目指しています」

ドライバーとしての生活はどうか。思い描いていたタクシードライバー像との乖離は少なかった、と森田さんは話す。その一方で外国人観光客へのインフラや、旧態依然な業界の仕組みには疑問を呈する。

「実際に働いてみると、意外と嫌な思いをしたことがなくて。車の中という限られた特別な空間で、お客さんとの会話は粋なものです。こんな時代でも温かい方はいらっしゃる。その反面、日本のタクシー業界は外国人に対して冷たいとは感じます。本当に満足されるサービスは何か、と試行錯誤しています」

本業タクシー、副業弁護士

新型コロナウイルスの感染拡大で、今年は5月に予定されていた司法試験が延期となった。だが、8月での実施が決定し、すでに願書を提出済みだという。現在も仕事の合間を縫い、参考書に向き合う時間は確保している。取材の最後に、司法試験に合格した後の人生について尋ねてみた。

「司法試験に合格しても、私はタクシードライバーを辞めません。この仕事が好きなんです。ドライバーをやりながら、細々と弁護士として困っている方を助けられたらいい。おそらく日本初であろう本業タクシー、副業弁護士。そんなドライバーがいても面白いでしょう。そして、実現すれば業界のイメージも変わるのでは、とも思っています」

異色の“弁護士ドライバー”は、早ければ今年の秋に誕生するかもしれない。

栗田 シメイ ノンフィクションライター

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くりた しめい / Shimei Kurita

1987年生まれ。広告代理店勤務などを経てフリーランスに。スポーツや経済、事件、海外情勢などを幅広く取材する。『Number』『Sportiva』といった総合スポーツ誌、野球、サッカーなど専門誌のほか、各週刊誌、ビジネス誌を中心に寄稿。著書に『コロナ禍の生き抜く タクシー業界サバイバル』。『甲子園を目指せ! 進学校野球部の飽くなき挑戦』など、構成本も多数。南米・欧州・アジア・中東など世界30カ国以上で取材を重ねている。連絡はkurioka0829@gmail.comまで。

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